YesMySweetest
乱戦は混迷を極め、もうムリかも・・・と諦めた所で敵味方のリーゼがひっくり返った光るキノコみたいにV型装備を展開し始めた。
そんな中で、未だねっとりと貼りつく大気をものともせずに元気に動き回っている機影を発見する。
見つけた。
ちょうど青白の敵機を破壊した所で脱力したように降下速度を上げてゆくルフィの機体を目掛け、加速する。
組み付きV型装備を展開するも、当然二機の荷重はカバーできず、絶縁シールドは激しく大気圧を受けるコッチ側が極端に変形し薄くなる。
『やめろ!なんのつもりだハマミ!』
「え、ダイジョブ気にしないで」
アラートの中で、自機が保持するリーゼパイロットの生命優先度を最大にする。
うるさい警報が止まった。
『おい、冷静になれ。今の宇宙にとってお前はかけがえのない・・・』
「宇宙だの平和だのあたしだの、どうでもいいの」
『いいわけないだろ!若さ、背負うモノ、俺なんかよりおまえの』
あんたに比べりゃそんな若くないのよムカつくなああああ!!!!!!!
「うるさいなあ、あたしが大事と思うモノが今!宇宙で一番大事なの!・・・それに」
前世の子供、光郎のあれやこれやの顔を次々と思い出す。
「あたし、このカラダじゃアナタの子を産めないから・・・」
『なんのハナシを・・・』
「だから、いいの」
涙声。
他の男に振れた感情が漏れたけど、息子だしいいよね。
「ありがとう最愛の人。わたしのこと、忘れないでね」
今世の最大の差別対象。
でも、たぶん失ったって・・・翌々日くらいには新しいオトコを求めてバーをはしご(7、80年代のイメージですんません)してんだろうけど。
それでもこの安い命よりも愛しい人。
『ハマミ!』
「最後にひとつ教えて・・・」
『なんだ!?それより・・・』
フフ、身を引く女は醜く退場しなきゃ・・・ね。
「アメリア、ってダレ?」
『っ!』
仕掛けながらも、その絶句が胸に刺さる。
ジュリアンからの情報提供やルフィの寝言などで存在を確信していた別の女。
きっと、あたしとは違う魅力にあふれた美しい人なんでしょうね・・・
沢山の子供にかこまれ美しい妻が寄り添うルフィが頭に浮かぶ。
痛みとやるせなさを素直に涙として流しながら通話モニタを切る。
僅かな断熱を期待し衝撃吸収の為のガスを抜く。
スーツのリニアリティレベルを固定し両手を胸に畳み固く握りしめる。
今も急速に上昇しているコクピット内の熱の苦しみによってルフィを放すことがないように。
最後にジュリアンへの私信をエアコムで飛ばし、あたしは燃えた。
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