ぷろぽんズ


ジュリアンが戦死したらしい。

訓練中に、だって。



・・・暗殺?

いちお、騎士爵にも拘わらず大閥に名を連ねる上位の家の当主だし・・・あるのかもしれないけど、訓練中とはいえいつ死んでもおかしくない危うさ・・・ヤル気や真剣みも無いのにすぐに調子に乗るような性格だし簡単に世を去る姿がムリなく脳裏に浮かんでしまうのが悲しい。


「ねえ、宇宙の葬式てどーやんの?」


「葬式?誰のだ」


「ダレって・・・ジュリアンよ」


「ジュリアン?死んだのか?」


件の訓練では教官だったくせに、冷たいルフィにとまどってしまう。


「ずいぶんと冷たいじゃん。・・・あたしが死んでも、きっとそんな風にスグ忘れ・・・」


目を潤ませながらのあたしの悲嘆は口づけから始まる激しい行為により喘ぎと絶叫へ変わっていった。

当然情感レクリエーションの誘い水なワケだけど、ルフィの燃え方が凄かった。



「・・・しかし、あの程度のケガで死ぬとはな。生き死になんてほんと分からんぜ」


幾つかの官能の波を越え、男に酔いつぶれた頭脳がルフィの言葉をなんとなしに拾ってゆく。


「そんな・・・軽傷だったの?」


「いや、メット脱がした時は血と内蔵がバケツをひっくり返したように流れ出て、こりゃ即死だと思ったんだが」


咥えたシガーに火をともしながら続ける。


「機動担架を展開した時にゃせき込み初めて・・・落ち着いて見りゃ骨もやってねえし息も心拍もある。ひっくり返った胃袋に見えたもんも影も形もねえ」


意識はなかったんだがな、と吐き出す紫煙と共に続ける。


「メディックはベッドがもったいねえとか愚痴ってたんだぜ・・・そうか、死んだのか」


ん?


「入院したの?あたしは訓練中の事故で即死って聞いたよ」


「・・・どうやらハナシが捩じれてるな。行ってくるか」


「うーん・・・あたしが行っとく」


ルフィの手があたしの体に伸びる。


「浮気か?」


「プッ・・・予想外すぎて余韻が、ひゃわっ!ブひゃひゃひゃ!!やめ・・・」



性感が脳接続に戻る迄、笑いが止まらずめたくそ苦しかった・・・







月基地の病院に入ると、ナースが付いて案内してくれた。


「わるいわね、忙しいでしょうに」


「とんでもございません!御身が院内で行方不明になったらと想像したら発電用重力機関を極小落下するしかなくなりますわ!」


危なすぎんだろこの看護婦正気?!


「あはは・・・たしかに今なら簡単にヤられちゃうでしょうね」


この看護師、何気にいい位置に居るし。


「させませんよ。ようやく宇宙に希望あしたが見えたのですから」


「フフ・・・たしかに、今の世に明日は掛け替えのないものよの」


「話に聞いたのですが、殿下は前世の記憶をお持ちであるとか?」


「うん。前々世と前世ね」


「二つも・・・あ、こちらです」


穴にも罠にもかけられず、ジュリアンが眠るベッドにたどり着いてしまった。


「ありがとう。たすかったわ」


看護師はひたむきな目であたしを見下ろし、口を開いた。


「殿下。・・・人は死んだらどこへ行くのでしょうか」


えっ、わからないよそんなん・・・て二回死んでたわwww


「・・・あたしには前々世の前の世の記憶がない」


ちょっと考える。

・・・行き当たりばったりに生きすぎてたかな?


「この世やひとつまえの前世があたしの妄想でないのなら、ゴールに付くまで人は記憶を受け継ぎながら転生を続けるのでしょうね」


「御身だけが特別とは思われないのですか?」


「まさか」


思わず反射的に否定してしまった。


「たしかに前世は特別だったわよ。超超銀河団の女帝の娘だったわ。でもくだらない取柄しかないブ男に恋して孕んで捨てられ最後はそこらの浮浪者に全身の皮を剥がれて焼き殺されたわ」


あれ?伯爵とか言われてたっけか・・・まぁフカシだよね。


「それは・・・壮大でいてもありふれ過ぎる人生でしたね・・・」


「前々世はつまんない男と結婚したから嫌がらせで遠ざけて夫の義務を果たさないからつって離婚し慰謝料ふんだくろうと思ったら刺されて死んだし・・・」


ため息が看護師と重なった。


ふたり目を合わせて笑う。


「そんないい加減で最低な人間でいて、憧れは看護師だったのよ」


「ふふ、そんないい仕事じゃないですよ」


笑い合い、看護師は身を返し出て行った。



ベッド横の丸椅子に腰を下ろし、ジュリアンの寝顔を眺める。


美しい・・・


突然彼は愁眉に苦吟を滲ませ呻くと、口をひらいた。


「ハマミ・・・結婚しようぜ」



「え、いやだ」



即答してしまったwww


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