空の桶すとら

バショク大佐を問い詰めたり泣かされたりした後、ルフィが出撃してヒマになった(軍団とは・・・)あたしは当て所なくふらり艦内を彷徨っていた。


「。。。カラオケ?」


レクルーム前の看板が目に留まる。


懐かしい。前々世じゃダンナとよく行ったな・・・とブースに入ると先客がギターを奏でていた。


ジュリアンじゃん。


煌びやかながらもちょっと切ない哀調で終わったあたりで声をかける。


「なーに、ジュリアンてギター弾けるの?」


問いかけると、彼はめたくそビックリした全白眼で見つめてきた。


・・・照れるwww


肌の赤みが抜けるファンデじゃなくてよかった。


「・・・いや、ロー低いポジションのコード鳴らせるだけだぜ」


そう言って骨ばった白く長い男の指がキラキラとした明るい和音を奏で出してゆく。


美しい・・・


「ソレを弾けるって言わない?」


弾いてんじゃん、めちゃくちゃ弾いてんじゃん。

そういうと、ジュリアンは眉根を寄せて便・・・悩むように目を眇める。


長いまつ毛が美しい・・・


なんて白人美を鑑賞していると、その下の無駄に薄く引き締まった唇がひらいた。


「・・・例えば、ちんこむりやり押し込んで『このあとどうするんですか?』ていう男と同じ階梯だ」


は?


「このあとどうするんですか!?!?!そんなん会ったことないよ!!!」


思わず叫んでしまった。


股を割かれ、モノをねじ入れられたあとに・・・或いは初めて肌を合わせ、恥じらいつつも受け入れたアトに・・・


「このあとどうするんですか・・・ええ・・・・・なにがしたいの・・・・・」


「おいおい、妄想で当事者になるな。戻って来い」


そう言われても三つの人生を総合した概念の死角を完全に突かれてしまい言葉が出てこない。


ジュリアンは着信があったのかエアコムを取り出し弄り始める。


動かれたくなくても濡れて無くても兎に角なんでもネジ入れてきて動きまくるのが男の誰もが変わることのない習性てヤツじゃないの?


・・・あ、でもジュリアンの初体験だったのかな?

あまり突っ込まないでおこう。



彼はせわしなくエアコムを弄り、送信か返信を終えると深くため息をついた。


傾げたアタマから長い金の髪がこぼれ、彫りの深い白く美しい顔を隠してゆく。

なんてミステリアス・・・って見とれてる場合じゃない。


「なにエアコム見てため息ついてんのよ。カラオケブースなんだから歌いなさいよ」


そうだよ、歌ってよ。


「ん・・・そうだな。じゃあ松任島ゆきみの鋼、と・・・三度、じゃない3フラットで・・・よし」


フフ・・・あたしも前々世で、よくキー下げしてハイジ前々世のダンナに揶揄われたな。


「キー下げ・・・日和りやがったか・・・」


ハイジの声音をまねてジュリアンをなじる。


「日和るてww意味解って言ってんのかwww」


「難事に際して旗色や天気見て行動を決めようとするとかそんなんでしょ、始まってるわよ」


女だと低い声域でも、男だと丁度いいのか太くも煌びやかな歪を乗せた美声が朗々と部屋に響く。


ああ、いいな・・・太く厚い男の声に包まれ、前々世のダンナのやさしさを思い出し涙が滲んで・・・・・・・・


突然の爆音にあたしの意識はトんでしまった。



医務室で目覚め、付き添ってくれていたルフィに問うと、あたしはジュリアンの絶叫でキゼツしたらしい。



さすが声だけで窓ガラスを割ることが出来る人種だわ・・・・・生きててよかった!



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