解体親書

「・・・もうよい。大尉、どうみる」



恩人に呆れられる。


前世前々世を含め、はたして今以上に自らを失望したことがあったであろうか?いや、無い



「は、唯々諾々と返還すれば無能を喧伝、開戦を選べば人質への無慈悲を突く、そして公女の殺害は・・・どちらにしても司令の名をヴェーダの理念もろともに貶め、おそらくはその上であわよくばカリスマを発揮しつつある公女ハマミの排除をも視野に含めたそれなりにやっかいな計略であると推測します」



あてこすりかwww



「カリスマを発揮?それは無知無能無教養の三無をいかんなく発揮しつつある現状への皮肉ですか?!いくら大尉でもあんまりです!」



ジツは疑問形が本意という不思議口語が暴発。



「中尉、しばらくは使者らしく黙してくれたまえ」



司令からのツッコミ。



「ウグッ、重ね重ね御無礼を・・・申し訳ありません」




最早土下座したい。が、この状況で土下座とか責任の矮小化を狙った諧謔、或いは自己満足の自慰オナ二ーにしかならんし。



ツライ!!



「内容の公開を宣告してみては?」



「親書をか?ヴェーダのトップには高度な政治が通用しない、と(なって)今後の活動の縮小を余儀なくされるぞ」



高度な、のところで司令の口が嘲けるように笑む。


その笑みが胸に痛い。



あたしの存在自体、司令が軽侮された高度な政治お金と格式そのものだから。



ん?



思わず大尉、エンリカと視線を交わし合ってしまう。



「・・・なんだ?示し合わせか。よい手管でも浮かんだか?」



あたしらの雰囲気が伝わったのか、司令が揶揄りつつも促す。



エンリカとあたしは大尉にどーぞどーぞの視線を発信。



「ハマミ中尉、汚名を雪ぐチャンスをやろう」



くっ、真正ロリのくせに!


高度な政治つったらあたしだよな~~~てゆるく視線で確認しあっただけで手管も対策も誰も何も思いついてねーよ!!!!!



「・・・その、親書の要求があまりに不完全です・・・と感じます。この身の殺害の証をどのように手に入れるのでしょう」


「続けてくれ」


いや、だから特に考えてねーよ!


「親書にある私の殺害の開陳を司令の好意として受ければ、口にせざるを得ないのですが、今待機中の・・・」


うーむ、転職先の面接で前職の会社内情を漏洩するとか即不採用案件なんだが・・・しかもその場の好き嫌いで組織へ背心・・・つーかあたし今兵士なんだから死刑wwとか言われても作戦として受け入れろよ・・・いや、あたしの自己保身も作戦に・・・?いやいやいやいや、兵士が考えてたら上官はいらねーんだよ!


「親書で排撃要求の二部隊小隊長はあたしの仲間です。つまりこの交渉は只のブラフでこの瞬間にもヴァルナ・・・ですか、この船諸共の排除を狙っていると考えます」


「つまり?」


ハイ結論!

あー、マシュー先輩大尉殿にカタキを餌に自爆させるのか。

あの瞳の輝きは本懐を遂げることを確信して澄み切った・・・殺意?

いやー、キレイではあったけど・・・前々世で包丁握りしめたダンナのギラ付きを思い出すとやっぱ物足り・・・ハイハイハイ男比べヤメヤメ!!つかあんとき痛すぎてマジ大後悔だったじゃん確か謝った気ィするし・・・今ダンナ見たら即撃ち殺す自信あるわ。


任務とか属性とか恋人とか転生とか娑婆臭いモン全部捨てて考えれば、マシュー先輩の想いを遂げさせることこそ最上。ルフィ、ごめん・・・


「あとは言えません」


答え選ぶ時間くれたのに・・・不実でごめん。

でも、せめて司令に対する感謝だけは表情できるよう感情のまま見つめた。



「解答を掴んだようです」



ギルベルトこの男は・・・してやったりて顔がむかつく。

適当に調子合せて全部もってくつもりかwwwむろんカオには出さん。



「ああ、兵士のカオになった。よい目だ」



ええー!


ママ友(いなかったけど!)みたいに量子レベルで見抜かれた気がする・・・つか命捨てる覚悟しか共有できないのか男て・・・どんな生物よ!昆虫か?!



「しかし資本や政治ゲーム的にも、我々の元で殿下を失うわけにはいかんな」



時間稼ぎ的におしゃべりは大歓迎なんだが、肚が座ってしまったのか危機感が無いよこの人等・・・あたし船諸共排除、つったよね?なんか不安。


「その、あたしの身がそれほど・・・でしょうか?肩書はありますが、数々の・・・自らの不明により汚損しておりますし」


こんな汚れてもお家取り潰しを裁可なさらんのだよな陛下・・・どころか養子の話まで・・・てどーでもいいわ。


マシュー先輩、はやく、今のうちに!

などと抜け目なく尽くす女気分を味わうシコる



「汚損・・・世における御身への心象はむしろ清められたであろう。・・・はじめから何か違和感があったが、殿下は何も御存じないのか?」



は?


・・・あの~~、世が違えばワレは超銀河団支配者の後継であるぞ!たかが百年も生きられぬ羽虫がごとき者ら風情が知らぬ知ったとナニを無礼な・・・まあナマ皮剥がれて死んだけど・・・つか自爆マウントやめやめ!



「・・・なにやら周囲が生温いと感じてはおりますが、皆目」



なんというか、その件に関しては世間というか宇宙規模で情報に取り残されてる感じがする。

でも別に大した事ないっしょ?



「ハマミ中尉、この映像はキミだろう」





大尉がホロディスプレイを開き、映像を流す。



『・・・我々にとって、暖炉にくべる薪の・・』



あら、数日前なのにもう懐かしい。


なんだ?いつも通り悪役令嬢全開で蹴り倒したのに・・・ファンアンチが減ってしまったのだろうか。



飽きられた?



その直後、悪役令嬢、その真なる心は~などという不吉なナレーションとともに場面が変わった。



『何人死んだと思って(中略)・・・・・ありがとう。・・・手の震え、止まりました(ナミダツツ~~・・・キラッ☆』



げえっ!関羽?!?!



真の心と書いてまごころ、などと痛い系レトリックが164・・・2だか5だかの進行のバラードと共に流れている。



くっさ!!死に晒せ!!!!!


・・・マスコミ殴るとこだけはキレイに消しクサりやがって・・・







「・・・は、ハハ・・、こっ、これはお見苦しいモノを・・・自慰により救世・・・死者を自身の感興を昂らせる道具にしようなど、まさに汚穢の化身・・・伊弉諾の御代より排泄物に塗れ続けてきた便所神でさえ顔を背けましょう」





無駄に正当な自虐評価をしてしまったが、カオは真っ赤である。


独りよがり1Pの三人称視点がこれほど痛々しいモノとは・・・



世の中に自分の秘め事を公開され、恥じない人間がいるだろうか。



無駄に挑発して憎悪を集め被虐的妄想を募らせていた恥い趣味が、リボンを巻かれ丁寧な、しかしどぎついラッピングの見るに堪えない脚色で衆目に晒されてしまったのだ。



つまり全宇宙公開オナ二ー。







あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥ

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