ますこみゅ
「正義の復讐者、凶弾に倒れる・・・か」
バサリ、と重厚な黒檀の机に情報誌が置かれる。
「紙新聞ですか。よい趣味をしておられます」
前々世だとありふれた大衆情報誌だが、はっきり言って人命よか動植物のが貴重な宇宙世紀においては反社会的かつ悪魔的所業の権化と言い切れるほどの高級品だったりすんのよね~わらうw
「中尉は前世の記憶があるのだろう。出勤途中に読んで捨てるくらいあたりまえの生活雑貨だったと聞く。キミにはなじみ深いモノではないのかね?」
「フッ・・・いえ、失礼しました。前々世ではシンブンは手や服が汚れるので購読しておりませんでした。主にオジ・・・年配男性の代名・・・代表的な神器、という印象であります」
前々世だけど。
夏でもジャケが手放せない理由の一つでもあったのよね~・・・はぁ、前世なら痴漢や新聞おじもその場でたちどころに射殺して世は全て事も無し、でいけるのにな。弱い、てつれぇわ。
いや、結局ナマ皮削がされて焼かれたんだった。
女を連れ炎の向こうに去っていく息子氏の後ろ姿を思い出す。
弱い、てなんだろう・・・
「コレ高いのに・・・上官に嫌味は感心せんぞ」
「重ねて失礼いたしました大佐殿。新聞には身体的なハラスメントやその隠蔽などに使われた等、不快な記憶が喚起されるのであります。・・・つきましては釈明のため、役割に扮した実演をするもやぶさかではないものと提案イタシマス」
高いのに、てシュンと萎れる様がジジカワすぎてやばい。逸材かこいつ。
「フム、なるほど。そのレポートはバルフィンド中尉から受け取ろう。・・・彼も今週中には戻れる筈だ。ハマミ中尉も営倉より営巣が好ましかろう?退がれ」
「ハッ」
「そうだ、マスコミの取材要請がきているが、受けるかね?」
「は・・・?命令ではないのでありますか?」
「うむ、中尉次第でよい」
「では、受けます」
「わかった。行ってよし」
逝ってヨシ!
「失礼します」
敬礼し退出。
チッ、”そんな貧相なカラダにゃ興味ねーよ、カレシとヤッてろ”てか?
やさぐれながら機動担架カツイデナクナイ君の操作棒を倒す。
・・・まぁ。ムリかこんなナリでは。いや、でも痴漢プレイだし・・・つうか付き合ってるのバレてんのかなんで??
などと懊悩しながら部屋へと戻り、ウィ~~~ンと仰臥。
亡国の王女(公女じゃだめなんか?)、被害妄想で整備兵を射殺?!から奇麗に一回転、か。
悪者を指す針は常にこっちを向いている。
それよか正義の復讐てなんやねん!無念、愛娘の仇討ち果たせずとか・・・あ、コピーに書いてあるやつだったわコレ。
こういう記事は、なるべく隅々まで読むようにしている。
戦災被害の詳細と、いかに罪なく善良な家族が残虐に殺されていったかという悲劇の演出、転じて現公家(公爵家、な。お公家様ではないのでおじゃる)への憎しみを放送コードの限界を軽く超えてこれでもかと煽って書いてある。
一番秀逸だったのは、「すくなくとも皇室はザイオン公家を取り潰し、公女ハマミを民の復讐へと捧げるべき」という一文・・・なのだが、始めて人を殺めてしまったからか、酸鼻極まるであろう自らへの陵虐、淫靡な宴への妄想も今一つ捗らない。
(殺す気は無かった。動きを止めようとしただけです)
前々世で爆笑した殺人犯の言い訳を復唱することになるとはね。
機に挑み変に応じて適宜殺人を行使します!と公文に残すのは、社会通念上、非常に問題だとかなんとかで誘導されこのような仕儀となったのである。
そいや前々世でも
「ぶっ殺すつもりでぶっ殺したんすよ!マジす!」
「うむ。だがキミは殺そうと考えてはいなかった。だって君、コレ以前に人殺したことあるの?」
「ないっす!でも殺意極めて骨頂にありました!」
「つまり殺すにあたり具体的な手段を用意実行してはいなかった。考えるだけなら無罪だし、大丈夫wwwはいむざぁあああい!!!」
などの減刑ムーヴが慣例化されてしまっているというような話も聞いた。
ため息をつく。
あーはやくハゲ・・・じゃなくてルフィに会いたい。
通信コール。
ルフィかも?以心伝心てヤツかな、などと現実逃避しながらONすると、やはり取材班の到着だった。
応接を了承して切る。
うーん、今一つ気が乗らないな・・・
どうやって煽ろう。
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