虫の集合意思統一儀式
「では、討たれるつもりはあくまでも無いと」
「当然ですわ。そも、この身を下賎へ差し出せなど身の程をわきまえぬ要求、正に慮外千万。
「そもそも、といえば我々大衆はあなた方を、貴種をみとめてはいない。滑稽な思い上がりだと思わないのですか?」
「フフ、つまりは平等だと?それこそ僭越というもの。真に等しく力をもつというのであればいつでも受けて立ちますわよ?今回のように」
「後ろから撃ったのですよね。受けて立つ、と言いながら卑怯でしょう」
「日常に紛れ襲い来るのは卑怯ではないと?」
扇子(番組側が用意してくれた)で口を隠して下マブタを上げる。
「間抜けなあなた方がもう少しだけ正々堂々を理解出来れば、あの若者も撃たれず済んだでしょうに・・・」
目を伏せ、愁嘆を演じる。
「つまり、謝罪も含めて卑怯なふるまいを今後も止めるつもりはないと」
え?もっかい言うの??
・・・あ、ヒットソングのお約束だった。
「・・・哀れですわぁ。大衆など、我々にとっては暖炉にくべる薪程度の価値・・・アハハッ、失言でしたわ!今世紀では薪一本、居住ドーム三つ四つ分ほどの人間よりもはるかに貴重でしたわね(爆笑)」
令嬢の爆笑だから高貴な感じのアレよ、オホホホホ~~~てやつ。
終始あたしは大衆を無知蒙昧な下賎と嘲弄し、レポーターは大衆側で正義の怒りを燃やす。
対立構造に則り、情感優先のドラマを盛り上げる・・・いわゆるプロレスてやつ?
いやいや、人が山盛りで死に続けんだからプロレスに失礼だろ。
戦争は続いてる、これからも続く。。。なのよね。
取材が終わり、オツカレーなどと買わされる声に前々世のカレーなぞを彷彿としてるとレポーターが近づいてきた。
「取材は終わりですが、あなたに聞きたい。なぜ皇族を貶めるようなことをするのです」
「えー・・・あなたの演出に合わせただけ・・・のはずだったけど、何が言いたいの?」
「今言った言葉通りです。あなたは・・・あなたの存在、言動は貴種と大衆の分断・・憎悪を煽り、テロルを扇動しているとしか思えない」
お、なんかおフランスな香り。
「ん-・・・取材は終わりなのよね」
「カネですか」
「今、彼氏が長期出張中でね・・・やだ、セクハラじゃないわよ。手を握って欲しいだけ」
男の眼輪筋が震える。
「ウフ・・・血にまみれた手は、お嫌?当然よね」
嫌悪もあらわに嫌々と差し出してきた。
ホモか?
この時代、ホモセクシュアルは常識の一部になってるから女が接触を要求するのはハラスメントやとても失礼な行為(女性に触らせろ、と要求するのと同じ)なのよね・・・
しかしあたしは躊躇なく即座に両手で縋りつき、上体をせり出して胸に寄せる。
「前大戦で公(国)民世論を開戦へ誘導したのも、いくつもの工業コロニーで暴動、虐殺を誘発させて外惑星系の庶民、軍閥を炊きつけ戦線を内惑星系全域に拡大させたのも!全部、全部あなた方マスコミの成果じゃないですかッ!連邦首脳の意思?判断したのは大衆?一体何人死んだと思ってるんです!二百七十兆五千六百億人ですよ!?死んだ者たちの無念、残された者たちの憎悪!悲しみ!血の復讐を一体・・・一体誰が?・・・わたくし達が受ける、それしかないでしょう」
涙うるうる決壊寸前まで貯めがら迫ったらめっさ引いててウケるwww大草原不可避wwwwww
「殿下!閣下殿下!!若いヤツをからかうのはやめてください!」
サープリなのかプリンセッサーなのか。
調理器具なの?。
大戦前からお貴族番組などで家族ぐるみで懇意にして頂いてるお目付け役おじのダニーが血相変えて走ってきた。
一応あたしの拷問陵虐映像を企画する、という淫靡な闇の契約もしてたりする。
「・・・ありがとう。手の震え、止まりました」
小さくささやきながら男の手を離し、自分の握り込んだ右手をムネに当てながら退がり、微笑む。
同時にクビを傾け、貯めた涙を一筋に流す。
〇神くんの〇庭の事情で習得した必殺技やぞ。
宇宙世紀だとアイラインもアブラでは流れないが涙では流れるやつとか暗闇で光る(前々世でもあった)やつとか無重力下でむくませない(要最優先検証)とかいろいろありすぎて全部検証するだけで数年は消えそう。
おい、騙されるな、正気に戻れ、と肩をドツかれる若者を視線から解放し、ブリーフィングにも使う大部屋から出る。
ちな未だ機動担架カツイデナインジャーくんに乗ってて涙はホンモノの激痛涙です。
ああああ痛み止めはやく!はやく部屋へ!!!
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