アベンジャーズ

「120時間のシミュレーションを終えた貴官らには、これより実機テストへ入ってもらう」


軍隊っぽくないな~。

前々世の外部委託研修みたい。


「教官、質問があります」


「エンリカ中尉か。なにかね」


「配機されるリーゼは新型と聞いております。民間居住区でテストを行うのは・・・いえ、ロケーションに不満があります」


「なるほど。機密については懸念無用。民間に被害なりを齎さないことは訓練とする。他には」


発言すべきだろうか・・・


エンリカの制服姿がエロい。

ベレー系の制帽でクールな面立ちが引き立ってるし、オトコならずともドキムネは抗えず、訓練には多大な支障をもたらすであろうということを。



「ないようであるな。では解散。駐機所へ向かえ」


答礼、グダる。


「エンリカぁ~~」


「ハマミ中尉、なに?」


「あたし、不安」


手を引きながら、腰にすがる。


「装備に実弾があるし、演習もあるのよ?民間の住居に着弾でもしたら・・・」


エンリカに縋りつくと、ちょうど心地よい弾力と重さの脂肪球が頭に乗ってくる。

ヤマダ博士の功罪についての議論は数多あれ、局所的な重力コントロールを可能にした理論は宇宙の距離を変えただけではなく、私たち()女の肩こりを永遠に解消してくれたこの発明については全人類の過半数の賛意を得たことはまず間違いない。


密着に下心を悟られたか、エンリカの溜息。


「仕方ないわね、今夜は空けとくからもう離れなさい」


シカタナイワネー頂きました!!!!!

サバトの予約よかそっちのが嬉しい。

仕様がない、ならモアハッピーではあったけど。


「うまくやりやがって」


駐機ブースへの道すがら、ジュリアンが小突いてくる。


「ウフ、ありがと」


祝意に嫉妬や羨望の欠片も無いんだよな~。

気安いスキンシップにもまったく嫌悪感湧かないし、なんならここまで背負われて・・・昨夜のルフィはハゲしかったから・・・来てたわ忘れてたwww


セクシュアルな機微にはノってくるし、無視や嫌悪を表すこともない。

ホモ気もロリ気も無いし、先日の美少年についても、つつけば不機嫌にはなるものの、思い出すまで数秒かかるし。

女でもいれば不思議でもないんだけど、男同士で騒いでるばかりで女のカゲは皆無。


謎の爽やかさを持つ男。


新型リーゼ、レグナ・ツァイのハッチ向こうへ消える姿を見送り、自機へ向かう。


すると、駐機ブースよりなにやら工事中みたいな不穏な音が。


「ちょっと、それあたしの機体なんだけど」


コクピットハッチからおっさんが顔を出す。


「あぁ、ほんとちいせえな。ハマミ中尉?」


「あなたは?」


「整備中隊主任のヤマダだ。わりいがもちっとまってくれや」


言い捨てると、ひっこんでしまう。


「なんなの・・・」


「主任ー!・・あ」


若い整備兵だ。


「・・・カオに書いてあるわよ、なんで子どもが、って」


「失礼しました。主任~」


官位階級+殿を忘れてるぞ。


これ見よがしな無礼。


標的の個性に合わせた常態的イレギュラー作業の演出。


「ちょっとぉ~」


子どもっぽく拗ねた声音で不満しながら、抜いて発砲する。

二発の乾いた発砲音。

暗殺者(仮)の若い方が崩れ落ちるように倒れ、排莢されたガスカートリッジが地に音を立てるのと同時にスタンマインをコクピットに投げ込む。


「あたし子供じゃないんだけど!」


音のない発光を確認後、ハッチへと飛ぶ。


「知ってるよ」


差し入れた銃を手首ごと握られ、コクピット内に引き倒される。

右大腿部後ろに熱く鋭い激痛。叫ぶ。


「次は肛門だ。ポリスが来る前に内臓かっさばいて・・・」


腿から灼熱の物体が引き抜かれる痛みに全身が跳ねる。

この痛みさえなければ官能的な申し出なのだが、今はさっさと挿入頂いて大量出血により昇天したいと願うばかりの体である。


突然手の拘束が緩む。


全力で振りほどき(つっても激痛で全筋肉全力しか出せないのだが)、ヤマダ主任に向け発砲。


銃口からの水蒸気の向こうでツナギに二発の穴をあけたおじさんは、なぜか自分のハラというか胸というか・・・てあたりにナイフを刺し込んで硬直していた。


切腹か??


ナイフから手を放し、あたしのクビを握りつつ倒れ込んでくる。

頭がちょうどあたしの隣に落ち、見つめ合う形になった。


瞳孔が開いてるな。鮮魚のようだ。

死んだ魚のような、という前々世の慣用句が頭に浮かぶ。

使ってた奴らって死んだサカナとか見たことあんのか?ひょっとして死んだ女て比喩だったりしない??


「リエ・・・」


おっさんが発声。

謎の女リエ登場。


「お父さん、ショートケーキ買ってきてくれた?」


戯れに問いかけてみた。


「・・・ああ、ごめんよ。すぐに買って・・・」


ムスメか~~~泣かせるぜ。

おっさんの眼から光が消えて行く。乾くのはえーな。

これが死んだ魚の目か?



「えりタン・・・お父さん、送ってあげたよ」


ケーキは買ってないって。




あ、リエだわ。


瞬間、右脚の激痛に気づき、失神した。


やばい、このカラダて子供産んだら死ぬわ・・・

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