臣籍の族達
過去夢をみていた。
前世や前々世ではなく、今世の記憶。
「どうした、もう人形はうれしくない歳か?」
ダンディなバロンひげのジジイがなんとも微妙な人形をくれる。
「火星土産では定番だと聞いたんだがな・・・ヤツは罷免しよう」
古式ゆかしい火星人なのだが、アタマがもろ鬼頭なのよね・・・触手の生えた鬼頭。
ひょっとしてナニ系なアレを期待してんのか?
「・・・夢に出ちゃいそうです」
言いながら抱きしめてみる。
「おお、そうか。じいじだと思って一緒に寝ておくれ」
むちゃくそ喜んでてマジひくわー・・・
触手の生えた鬼頭になって幼女にナニしようってんだこのジジイはwww
「木星へ・・・ほんとうに行かれるのですか?」
「ああ、まぁ・・・降伏へ向けた保身作業さ。実績作りだよ、わかるかね?」
「戦争を止めようとした・・・というポーズですね?降伏後の裁判で主張するための」
「そうだ」
めちゃくちゃイイ笑顔でわしゃわしゃとアタマをなでてくれる。
「あぶのうございます。木星まですでに安全な宙域はないのでしょう?デブリによる損害がひどく、もはや戦闘すらないと聞きます」
火星方面軍のお飾りとして提督と呼ばれる(階級というか位階というか官位というかそんなんは相次ぐ脱走や亡命や戦死でナントカ大臣なんてのをいっぱい兼任してた)じいじは、他の皇統に連なる族と同じく戦後に向けた保身への実績作りに右往左往してると思っていたのだが・・・・・
着崩した礼装の後ろ、うなじ(見えないが)辺りにイヤな儚さを感じる。
「はっは。ソレも私が流してるウワサだ。命がけで戦闘停止の勅令を届けた、と厚顔にのたまえるであろう?」
ウソだ。
敗戦が濃厚になるにつけ急速に夫婦仲を回復させた両親の愚痴や不安を立ち聞きしてるからわかる。
第七師団長と幾つかの連隊のトップは戦意旺盛な兵を留めきれず、皇統への尊崇の念へ縋るしかないと泣きついてきているのだ。
参謀部では外惑星方面軍は切り捨てる腹積もり。
そも、金で軍団長の椅子を買い外惑星系の人と資源を欲しいままにし続けた挙句の泣き言などを、と、ハナから相手にしていなかったりする。
・・・そんなクズどもの為に、なぜじいじが貧乏くじを引くの?
「そうでしたの、ハマミは安心しました」
なぁ~んだ、て感じに笑ってやる。
「・・・だがな、自分で流しておきながらいささか不安にもなっておるのじゃ。お守りにちゅーしてくれんかの?」
ちんぽにか?いいけどさ・・・
「・・・はい。では、お顔を」
うれしハズかし照れ笑い、みたいな感じでへその下に組んだ両手を胸の前に畳む。
かがみ寄せてきたギトギトと油に光る頬にぶちゅっ、とした後、開いた大襟に両手をつっこんで太い首にジャンピングでしがみ付く。
『なぜ・・・なぜ阿漕な凡俗共を・・・強欲な商人風勢のためにおじいさまが』
『兵がいるのだよ、今も御国の柱石たらんと死に続けている兵士達が』
死兵処理か・・・新政府勃て・・・立てて独立国家爆誕とか?それは兎も角。
う~ん、めちゃくちゃオイリーだな。
洒落者気取りのじいじがこんな無精してナニ頑張ってんだろう。
疲れ切った老境にある男の油粘土のような体臭をおもいっきり吸い込むと、哺乳類として普遍的(個人の感想です)な差別感情が強烈に湧き上がってくる。
「生きて帰ってくださいませ」
いちばんニオう耳の下あたりにむちゃくそ顔をぐりぐりと押し付け、そうつぶやくと、アブラが沁みて(痛ェ~)止まらなくなった涙を垂れ流しつつ、じいじから降り鬼頭触手人形(捨てろ)を拾いダッシュでその場を去った。
・・・全力で部屋に誘っとる流れやぞコレェー!?あたしナニしてん?!?!?
まぁ、餓鬼の部屋なんかにゃこないわな・・・つまらん
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