車掌



重厚なコートと制帽でビシッとキメたこの私は車掌です。

しかも地球迄の往復運行の宇宙電車48フォーリィエイトの車掌。


いよいよの発車まで暫くのティータイムです。


お気に入りのクッキーをキヲスクで購入し、車掌室へ入りかけたところで背中に強い悪寒を感じ振り向くと、そこには古い水夫のシャツにミニスカートというやたら煽情的なコスプレをしたエーテル様がおわしました。


「エーテル様?いかがいたしましたか」


「あの二人を・・・」


「は?」


「あの二人を乗せてはダメ・・・」


「あの二人ですか?どなたのことで」


「乗せたら絶対におろしてはいけないィイイイイ!!!!!!」


「ヒエー」


錯乱したエーテル様にビビって思わず一歩下がると、その姿はまるで白昼夢のように消えていました。


握り潰しかけたクッキーの缶をためつすがめつ、最近変な映画でも見たかなと車掌室の引き戸を開けたとき、耳元で声がしました。


「あの女じゃねーっつの。お前も男か・・・ほんと男て髪型と化粧しか見ねーよな」


うおっ、と振り向くと、そこには全身の皮を削がされた人が一瞬だけ見えたのでした。


更にちょっとだけビビった後、これはなにかの予言ではあるまいか、と心することに決めました。


キーワードは ” あの二人 ” 。


お客様の安全は、この車掌の信念にかかっているのです!




「しかし、ホントのジブンを見て欲しいのよ系のわがままですか・・・まぁあたし(男)にとっちゃ贅沢も過ぎた世迷い事に過ぎないですけどね、フッ・・・」


後の世に”全宇宙に惨と悲と死を齎した破局的災厄”の代名詞となる宇宙電車48《フォーリィエイト》の旅がはじまる。




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