day12.チョコミント
ぴんぽーん。チャイムがなった瞬間、カナメは居留守を使おうかどうか迷った。
何故ならちょうど晩ご飯の一口目、からあげを口に入れたばかりだったからだ。急いで飲み込んで玄関まで行った結果、どうでもいいようなセールスでした、というのは嫌すぎる。
しかし実家から送られてきた宅配便の可能性がなくもないので、しぶしぶ腰を上げる。
「ふぁい」
変な人だったらすぐにシャットアウトできるように、チェーンを掛けたままドアをそっと開ける。が、隙間から見える範囲には誰もいない。
「こんばんは」
足元から声がした。声の方向に目をやると、いつぞやのタコがいた。それはいいとして、いったいどうやってチャイムを鳴らしたのだろう。
「ご飯時に申し訳ありません。身の振り方が決まりましたので、改めてお礼をと思いまして」
長く生きているだけあって、律儀で礼儀正しいタコである。とりあえずチェーンを外し、部屋に上がってもらおうとするが彼女(多分)は遠慮するように頭を横にふる。
「すみません。今日はまだ行くところがありますので、これで失礼させていただきます。ああ、あと、先ほどあなた宛てということで、こちらを預かりました」
しゃがみ込んで、タコが差し出す小包を受け取る。カラフルなパッケージのそれは、最近よく行く駅前のキャンディ専門店で売っている、チョコミントキャンディだった。
『この前は部下たちが失礼した。怪我などしていないといいのだが。わけあって人前に姿を現せないので、こんな形でしかお詫びが出来ず申し訳ない。好物だと伺ったので、よろしければお納め願いたい』
脳裏に、昨日の塔での出来事が去来する。確かにチョコミントは好きだし、ここのキャンディは最近一番の大好物だが、一体誰に聞いたのだろう。そもそも何故うちを知っていて、彼女に荷物を託すことができたのだろう。個人情報がだだ漏れになっているようで、なんだか気味が悪い。色々と悩んでいるうちに、また背中が痛くなってきた。
「そうそう、最後になりましたが、私もこちらのマンションに住むことになりましたので、どうぞよろしくお願いたします」
「え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます