第78話 蒼月邸での鍛錬 -18-

その後は、教えてもらった予定通りに続きを進めていくことになった。


自室に戻って、ほむらくんの見よう見まねでストレッチと筋トレをする。久しぶりだから結構きつい・・・。


しかし、あやかしの世界に、ストレッチはともかく、筋トレという概念があるのはなんだか不思議な感じがする。

まあ、でも、考えてみたら、昨日の人感センサーで点灯するライトも然り、世界観的には昔の日本のような雰囲気だけれど、テクノロジーや文化が独自に進化しているのかもしれない。


続けては妖具の使い方ということで、それに先駆けて今できることの確認をすることになった。


「琴音は面白い結界が張れるって蒼月様から聞いてるんだけど、それ、見せてよ。」


ほむらくんに言われて、静寂しじまと癒しの結界を張ってみる。


「これは・・・すごいね!」


ほむらくんはそう言いながら、中から壁をペタペタ触ってまわっている。


「そいじゃ、今度は外から色々試してみたいから、一回解いておいらが入らないようにもう一度結界張ってみてくれる?」


結界を解くと、ぷるんと震えてじわ〜って音がしそうな感じで解けていくのが、毎回実はちょっと楽しみだったりする。

それから、ほむらくんは結界の外にいるイメージで結界を貼り直すと、思ったとおり中は私だけがいる状態で張ることができた。


外でほむらくんが驚いた顔で何かを言っているけれど、当然中にいる私には何も聞こえない。

中からしばらくほむらくんを見ていると、この前の翔夜くんみたいに、何やら術を試しているように見える。

しばらくして結界を解いて、と言っているようなジェスチャーをしているのが見えたので、再び結界を解くと、ほむらくんはやや興奮した感じで言った。


「この結界、最強じゃん!こんな強力な結界張ってて、琴音は疲れないの?」


そう言われて手をぶらぶらして見るものの、特に疲れは感じていない。


「うーん・・・今のところ特に体力削られてる感じはしないけど・・・でも、どうなんだろう。時間の経過で疲れたり、強い攻撃を受けたら疲れたりとかってするのかな?」


だって、それがなければ本当に最強の結界になってしまう。

妖力も何もない私が、守り水晶の力だけでそんなチートレベルの結界を張れてしまったら、色々おかしなことになる。


「何か弱点とかってあるのかなあ・・・?」


あるなら早めに知っておきたい。じゃないと、戦いの最中に「そんなバカな・・・」みたいな状況になったら目も当てられない。

それを聞いたほむらくんは、


「じゃあ、今度おいらと蒼月様で同時に攻撃してみる、って言うのやってみようよ!」


と言いながら、あれとーこれとーと指折り数えながら何かをブツブツ数えている。

そんなほむらくんを、楽しそうにあれこれ考えてるなと見ていると、ふとほむらくんの指が止まった。


「ねえ、琴音。」


私の名前を呼んだ後、何かを探すように部屋の中をキョロキョロと見回したほむらくんは、


「もしかして、何か妖具みたいなもの、持ってたりする?なんか・・・妖力を感じるんだけど・・・」


くんくん、と何かを嗅ぐようなそぶりをしながら言った。


私としては心当たりがない。なので、


「妖力って匂うの?心当たりはないんだけれど・・・。」


と笑いながらほむらくんを見ると、小物をしまっている鏡台の引き出しの方を見ていることに気づき、


「妖具と言われるとピンとこないけど、鏡台の引き出しには石が入ってるよ。」


ちょっと待ってね、と言いながら鏡台まで行き、引き出しを開けて、昨日長老から頂いた石が入っている巾着袋を取り出す。


「そうそう!その袋から妖力を感じる!でも、おかしいな・・・この部屋に入ってきた時は感じなかったんだけど・・・」


いぶかしがるほむらくんの目の前に持っていき、袋を開けて中にある石を取り出すと、


雷光石らいこうせき輝夜石かぐやいしか!琴音、いい石持ってんな〜。でも・・・なんで石から妖力を感じるんだ?」


と首を傾げた。

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