第74話 蒼月邸での鍛錬 -14-
小鞠さんとそんな会話をしていると廊下から話し声が聞こえてきて、蒼月さんと
「おはようございます。」
二人に向かって声をかけると、
「おはよう。」
「おいらは二度目だけど、おっはよー!」
と二人から返事が返ってくる。
二人は手慣れた様子で朝食を準備(と言ってもお米や汁物をお碗によそったり、お皿におかずを乗せたりとかそのレベルだけど)すると、席に着いた。
「琴音は食べないの?」
そう言われて、自分はまだ用意していなかったことに気づく。
「あ、今いろいろ説明していただいてて・・・これから食べるよ。お先にどうぞ召し上がれ。」
自分が作ったわけでもないのについそう言ってしまったが、二人は気にすることなく食べ始めた。
私も自分の分をよそって席に着き、いただく。
夜ごはんと違って食卓は静かだ。
朝はそれぞれのタイミングで食べると言っていたし、ご飯もそれぞれ思うように食べると言うことなのだろうと理解し、静かに箸を進めた。
しかし、食後のお茶を飲んでいる時に、突然、蒼月さんから話しかけられた。
「
褒め言葉かな?と思って顔が緩んだのも束の間、
「成績は散々だったようだが・・・」
そう言われ、ガクリと項垂れるも、
「まあ、最初からうまくできるようなら、私のところに弟子入りなどしようと思わないだろう。気にするな。」
その言葉に、蒼月さんなりに励ましてくれているのだと思い、嬉しくなって蒼月さんを見ると、
「とはいえ、まだまだ全然なのは言うまでもないからな。これからも精進するように。」
と、
「はい・・・頑張ります・・・」
そう言って再度項垂れる私に、
「琴音は表情がくるくる変わって、見てて飽きないな。」
と笑う。
子供に「見ていて飽きない」と言われるなど、大人としてどうなのかと思いながらも、確かに言われた通りに上がり下がりしていたので返す言葉もない。
小鞠さんはそんなやりとりを聞いてクスクスと笑うばかりだったけれど、ふと思い出したように言った。
「琴音殿、さっき話した家事の件、どんな感じか、見ていくかえ?」
食後のお片付けも噂の蒼月さんの使い魔がやってくれるのか。
「はい、ぜひ!」
どんな使い魔がどうやって片付けていくのか興味津々なので、迷わず答える。
そんな中、蒼月さんは「ごちそうさま」と手を合わせると、流し場にある水の張られたたらいに食器を浸し、「それでは番所に行ってくる」と言って、食堂を出て行った。
私はというと、蒼月さんのお見送りをすべきかどうか迷っていた。ただの弟子なのに厚かましいかなとも思うし、弟子だからこそ見送るべきかなとも思うし・・・
そんなしょうもないことで葛藤していると、目の前をふよふよと複数の狐火が横切った。
「今日もごくろうさん。」
小鞠さんがそう声をかけたので、これが例の家事をしてくれる狐火たちだというのがわかった。
狐火たちは炎の姿のまま、たらいの中の食器をひとつずつ取り出し、器用に灰を使って洗っていく。狐火のままで、だ。
手を使わずにこれができるなんて、一体どういう原理かはわからないけれど、食器はみるみるうちにピカピカになっていく。
(・・・かわいい〜〜〜!)
小さな炎がちょこちょこと動きながら食器をきれいにしていく様は、見ていてとても癒される。
その後も粛々と食器を洗った狐火たちは、洗ったすべての食器を空中に並べ、風を発生させて乾かすと、食器棚にきれいに収めた。
さらに、最後に食卓、流し場を布巾できれいに拭き上げて、布巾を窓辺に吊るした後、ふよふよと食堂の外に出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます