第66話 蒼月邸での鍛錬 -6-
居間の真ん中には長老のお屋敷とはまた少し趣の違った一枚板のテーブルが置いてあり、明るい色に鞠の刺繍がされた座布団が敷かれた座椅子が置かれている。
(意外とかわいい趣味・・・?)
その、蒼月さんのイメージとは少し違った部屋の雰囲気に少しだけ違和感を感じたものの、促されるままに座椅子に腰をかけると、スッと障子が開き、てっきりこの家には私と蒼月さんしかいないと思い込んでいた私は、驚いて盛大にビクッとしてしまった。
「そんなに驚くこともなかろうて。」
そう言って笑いながらお茶の載ったお盆を持って部屋に入ってきたのは、小さな女の子で、
(わ・・・お人形さんみたい・・・)
日本人形のようなその小さな女の子が、「さすがのわらわも傷つくわぁ・・・」と言いながら、お茶を私の前に置く。
「あ・・・ごめんなさい。他には誰もいないと思っていたので・・・お茶、ありがとうございます。」
そう言いながらも、女の子から目が離せない。
「あの・・・もしかして、蒼月さんのお子さんですか?」
雰囲気的にお子さんがいそうには見えないけれど、かといって、赤の他人である小さな女の子と一緒に暮らしているとも思えず、思わず聞いてしまう。
その問いかけに、蒼月さんは飲みかけのお茶でゴフッと喉を詰まらせ、女の子は高い声でアハハハハと楽しそうに笑った後で、
「全く同じ反応とは、おかしなものじゃな。なあ、蒼月?」
蒼月さんを見て、さらに楽しそうに問いかける。
まだ少しむせている蒼月さんは、「失礼」と言って立ち上がると、ゴホゴホと咳をしながら部屋を出て行った。
そんな蒼月さんの後ろ姿を笑いながら見送った女の子は、私に向き直って、
「わらわは蒼月よりだいぶ長く生きておるぞ。」
と言った後で、
「わらわは
とにっこり微笑んだ。その言葉を聞いて、自分がまだ自己紹介もしていないことに気付き、
「あ、私は琴音と申します。突然お世話になることになってすみません。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。」
自己紹介をして頭を深々と下げる。
するとそこに静かな足音と共に障子が開き、蒼月さんが戻ってきた。
「なんだ、自己紹介は済んだようだな。では、部屋に案内しよう。」
そう言って部屋に入らずに廊下で待つ蒼月さんに、小鞠さんは苦笑いをしながら、
「おぬしはほんに・・・」
とため息をついた後、
「こんな態度ではあるが、悪気はないでの・・・仲良くしてやってくれ。」
小鞠さんの言葉に、私も少し苦笑いをしながらうなづき、それからゆっくりと立ち上がると、荷物を持って蒼月さんの後に続いた。
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