第64話 蒼月邸での鍛錬 -4-
妖狐はやっつけたものの、状況がまだわからないこともあり、授業はいまだにお休みのままだ。
蒼月さんはいつもの見回り、月影さんは番所のお留守番、翔夜くんは今日はお休み?とのことで、月影さんと二人でおしゃべりをしながらお茶を飲んでいる。
なんだかんだ一緒にいる時間が長いこともあり、気持ち的にはお兄さんのような存在の月影さんだけど、よくよく考えてみると、月影さん自身のことはよく知らないということに気付いた。
「そういえば、月影さんと千鶴さんはご夫婦になられてからどれくらいなんですか?」
私の突拍子もない質問に、月影さんは顎に手を当ててうーんと少し考えてから、
「200年くらいかな?」
と、事もなげに言った。
「200年!?」
その予想を遥かに上回る回答に、思わず声を上げてしまう。
まあ、人間より寿命が長いであろうことは予想していたけれど、想像の枠を超えている。もしくは、一年は365日じゃないのかもしれない。
「その間ずっと夫婦でいられるのもすごいですね。それにしても、月影さんはおいくつなのですか?」
聞いたところですごいな、という感想しか湧かないとは思いつつ、思わず聞いてしまう。
「さあ、いくつだと思う?」
すると、月影さんとしてはめずらしく、ニヤリと口角を上げて問い返してきた。
「まったくわかりません!」
考える事もせずに即答すると、ははは、と楽しそうに笑った月影さんは、
「今年で303歳になるよ。」
と言った。
(303歳は想像以上だな・・・。やっぱりあやかし界の年齢感覚は人間界とは全然違うんだな・・・)
303歳・・・その年齢がこの世界では若いのか、あるいは老齢なのか、正直なところ分からないな。
すると、私が考えていることがわかったのだろう。
「番所に来ている子供たちは、だいたい30〜50歳くらいかなあ・・・まあ、種族によって成長速度はまちまちだからねえ・・・あまり年齢は当てにならないよね。」
と宙を見上げて何かを数える素振りをしながら言った。
(琴音が一番子供だ〜〜〜!!!)
その言葉に、そう言って楽しそうに笑っていた子供たちを思い出す。
あやかし界の年齢設定、わからないな・・・まあ、とはいえ、大人か子供かは数字そのものより見た目で判断しても良さそうだけど・・・
たとえば、月影さんも千鶴さんも、見た目では30代前半にしか見えないから、年齢の感覚が本当に掴めない。
椿丸くんや翔夜くんは同い年か少し若く見えるよね・・・
そんなことを考えていたら、当然蒼月さんのことも気になった。
「蒼月さんは?」
月影さんに問いかけたわけではなく、自然と口から出た言葉なのだけれど、
「あー・・・蒼月さんの年齢については、実際のところ、俺もよく知らないんだ。俺より上なのは確実なんだけど・・・」
隠している感じでもなく、月影さんがそう答えた後で、
「まあ、これから一緒に過ごすことになるし、そのうち直接聞いてみたらいいんじゃないかな?伝説に登場するような存在だからなあ・・・謎だよね。」
と言った。
(ん・・・?今、なんて?)
聞き間違えでなければ、伝説に登場するような存在だから、と言った気がしてならない。
今言われたことを聞き返そうと口を開こうとしたその時、
「あ、蒼月さん、おかえりなさい。」
入り口に視線を移した月影さんがそう言って腰を上げたから、その話はそこで打ち切りとなってしまった。
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