第54話 弟子入りへの挑戦 -8-
天狗は忌まわしいものを見るような顔で私を見ると、
「おのれ・・・人間ごときが小賢しい・・・」
そう言って、再びうちわを振り上げる。
「守りの結界、張れ…!」
こちらだって殴られるのはごめんなので、反射的に呪文を唱える。
(これ、終わらないのでは・・・?)
またもや腕を結界の壁にめり込ませてうとうとしている天狗を見ながら、ふと思う。
自分でこんなことを言うのもどうかと思うけれど、今のところこの結界は無敵に思える。
まあ、守るだけで攻撃はできないので、相手が力尽きるまで私はこの中でのんびり外の様子を見ていることしかできないのだけれど。
とりあえずすぐに殴りかかってこようとするあぶない天狗は寝かせておきたいところだけれど、周りを見ると、なんの騒ぎだ?と他の天狗たちが集まってきているのが目に留まった。
「このままだとこの天狗の面目丸潰れだよね・・・」
プライドの高い天狗の、それもおそらく長であろうと思われる天狗に恥をかかせてはかわいそうだ。
また殴られるかもしれないとは思いつつ、再び結界を解く。
「
龍はそう言うけれど、私としては今のところこの天狗に恨みはないので、必要以上に恥をかかせる必要がないと思っただけだ。
結界を解いたことで再びハッと目覚めた天狗は、私を見て再度うちわを握る手に力を入れたが、そこはさすがに賢い天狗だ。周囲の状況と私の意図を瞬時に読み取ったのだろう。
「ほんに小賢しい・・・」
と悔しそうな顔を私に見せた後、うちわを背中に収めた。
「さて・・・わしは人間が嫌いだが、蒼月の頼みとあれば致し方ない。」
(何度も攻撃しようとしたくせに・・・)
私の表情が何かを物語っていたのか、ジロリと私をひと睨みした天狗が続ける。
「人間、おまえに一つ、試練を与えよう。」
その言葉に、ようやく本題に入れそうだと胸を撫で下ろす。
「ついてこい。」
天狗・・・
そして、あっという間に山頂が霧に覆われたかと思ったら、今度は急速で霧が引いていき、先ほどまではなかったはずの赤い鳥居が現れた。
山の風が心地よく吹き抜ける中、
「おお、我が
私の後ろにいた龍が嬉しそうに声をあげ、鳥居をくぐり、おもむろに振り返ると、
「
龍はそう言い残して静かに
それを聞いた
そんなざわめきを諌めるように、
「皆の者、静まれい!
すると辺りは一気に静まり返り、集まっていた天狗たちの中から、一匹?一人?の若者が現れた。
(あ、あの天狗・・・)
確証はないけれど、天狗山で最初の難関に遭遇した時に助けてくれた天狗のように見える。
「はい、ここに。」
しばらくして
「お嬢さん、また一つ謎解きをしてもらおう。」
と微笑んだ。
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