第55話 弟子入りへの挑戦 -9-
その言葉を聞いて、やっぱりさっきの天狗だったことがわかり、少しだけ緊張がほぐれる。
しかし、同時に彼の言葉は
「
チッと軽く舌打ちをして、苦虫を噛み潰したような顔で
すると、彼はにっこりと笑いながら、
「そうですね。僕は結構このお嬢さんのことを気に入っているけれど、試練は公平にやりますので心配は無用ですよ。」
と言って、私の方に向き直った。
「と言うことなので、先ほど同様真剣勝負で。」
(さっきの問題、めっちゃ簡単だったけど・・・)
きっとこの天狗はいい人?なんだろうなと一瞬思ったけれど、
「はい。よろしくお願いします!」
シャキッと背筋を伸ばして、めいっぱい頭を下げた。
蒼月さんの試練がいつまで続くかはわからない。わからないからこそ、一つ一つをしっかり丁寧にこなしていくしかない。
顔を上げた私を見て、
すると、あっという間に
(分身の術・・・!!)
そんな悠長なことを言っている場合ではないのは重々承知だけど、忍者を見ているようでワクワクする。
壱の天狗「我は壱の天狗なり。これより記憶にまつわる試練を開始する。」
弐の天狗「我は弐の天狗なり。見ての通り、5体の私がこれからそれぞれ語ることをしっかりと記憶するがよい。」
参の天狗「我は参の天狗なり。記憶するためにどのような方法を用いても構わない。」
四の天狗「我は四の天狗なり。問題を出してから、解答までに許される時間は10数えるまでだ。」
伍の天狗「我は伍の天狗なり。その速さはこのくらいである。」
そこまで説明した後、伍の天狗、つまり、一番右端の天狗がゆっくりと10まで数えてみせた。体感としては20秒くらいと言った感じだろうか。
仕事柄、記憶力にはまあまあ自信がある方なので、特に問題ないと告げると、
(なんかすごいトゲがある〜笑)
なぜそんなに嫌われているのかはわからないが、人間が嫌いと言っていたからには昔何かがあったのだろう。
人間が嫌いなのであって、私が嫌いなわけではないはず、と、とりあえず気にしないことにする。
壱の天狗「お嬢さんから何か聞きたいこと、言いたいことはあるかな?」
そう訊かれてふと考える。
「あ、一つだけ。話をするときは、必ず私と目を合わせて話をしていただけますか?」
仕事ではいつも顔と事象をセットで覚える癖がついているので、できれば同じ方法を取りたい。
まあ、今回はみんな同じ顔だからあまり意味はないのだけれど、とりあえず立ち位置は違うからそれも含めて覚えておけばなんとかなるだろうと思ったからだ。
「「「「「承知した。」」」」」
5体が同時にそう言ったのが、試練の開始の合図だったようで、それぞれがゆっくりと話し始めた。
壱の天狗「我は弐の天狗の父である。」
弐の天狗「我は参の天狗の弟である。」
参の天狗「我は四の天狗の甥(おい)である。」
四の天狗「我は弐の天狗の叔父(おじ)である。」
伍の天狗「我は参の天狗の友である。」
(なるほど、そういう問題ですか。)
壱の天狗「では、問題だ。弐の天狗と伍の天狗の関係はいかに?」
頭の中でそれぞれの役割を整理する。彼らは気づいていないかもしれないが、友以外は全員男性設定確定なので記憶するのはさほど難しくなかった。
いーち、にーー、さーんと数える声が響く中、私はゆっくりと答える。
「弐の天狗にとって、伍の天狗は兄の友。伍の天狗にとっては、弐の天狗は友の弟。」
シーンと静まり返る中、壱の天狗が声を上げる。
「お嬢さん、さすがだな。」
その声に、周りの天狗たちからワッと歓声が上がるものの、
壱の天狗「まだ続くぞ。」
伍の天狗「我は実は四の天狗の友でもある。」
(ほうほう。)
壱の天狗「次の問題だ。我と伍の天狗の関係はいかに?」
(ちょっとめんどくさい設定になってきたな・・・)
どう表現するのが適切なのか、20秒では整理しきれないので、
「壱の天狗にとって、伍の天狗は息子の友、もしくは、兄弟の友。伍の天狗にとっては、壱の天狗は友の父、もしくは、友の兄弟。」
と答える。その後もさほど変わらない問答がいくつか繰り返されて、この繰り返しだとそんなに難しくないんだよな・・・と思いつつ、
「まだ続きます??」
また
私のその生意気発言に、案の
「「「「「ははははは!お嬢さんのその気の強さと賢さ、やっぱり僕は好きだな。嫁候補に入れさせてもらおう。」」」」」
5体でハモりながらすごいことを言っている。
周りの天狗たちのどよめきを聞きつつも、とりあえず褒められていると受け取って、やや照れていると、
「
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