第25話 あやかしの世界を学ぶ -2-
子供達がお互いの顔を見合わせながら小さな声で話をしている。
「人間だ!初めて見た!」
「なんで人間がいるんだろ。」
「かあちゃんが人間には近づいちゃダメって言ってたよ!」
「怖い〜〜!」
最後のやつ、わかっていたけど、ちょっと凹む・・・
そんな私を見て、月影さんが笑いながら子供達を嗜めた。
「こらこら。知らないものはみんな怖いんだ。だから、まずはご挨拶だろ。そして、お互いを知ることから始めるんだ。」
そうしてにっこりと私を見た。
うう・・・そうですよね。
これは私にも言ってるんだよな・・・と思い、
「こんにちは。私は琴音と言います。昨日から長老のお屋敷でお世話になっています。よろしくね。」
そう言ってにっこりと微笑むと、深々と頭を下げる。
すると、子供たちも次々と自己紹介をしてくる。
狐の子、河童の子、火の玉っぽい子、色が透き通りそうなくらい白い子、他にも様々な種類の妖怪の子たちがいる。
一通り自己紹介が終わると、今度は質問攻めだ。
子供達が私の周りに集まっているのを、月影さんと千鶴さんが優しい顔で見ている。
「琴音はどうしてここに来たの?」
「人間界ってどんなところ?」
「人間って何を食べるの?」
「人間はあやかしが嫌いって本当?」
できるだけ丁寧に、分かる範囲で答える。
「琴音は何歳?」
髪の毛の周りにピリピリと小さな稲妻をいくつも浮かべた男の子が興味津々で聞いてきた。
「私?私は、26歳だよ。」
すると、その場にいた子供たちがみんな驚いた顔をして、次の瞬間、
「琴音が一番子供だ〜〜〜!!!」
と、笑った。
・・・絶対みんなの方が子供に見えるのに、いったいこの子達は何歳なんだろう・・・
(よし、一人づつ聞いてやる!)
そう思って、子供達の輪を見渡すと、いつの間にか知らない男の子が混ざっている。子供ではなく明らかに青年だ。
見た目だけでいうと、歳は私より少し下くらいに見える。椿丸くんと同じくらいかな・・・
やや切れ長の瞳に、星空のような鮮やかな藍色の髪、高校とかだとサッカー部で人気がありそうな風貌だ。
思わずその彼と目が合うと、その男の子はにっこりと微笑んで、
「琴音ちゃんていうの?かわいいね。俺んとこに嫁に来ない?」
って言いながら、おもむろに私の手を取り、
「俺は翔夜。よろしくね。」
慣れたそぶりで私の手の甲に、そっと唇を寄せた。
(〜〜〜〜〜!!!)
突然のことに、ただただびっくりしていると、
「あーーー!翔夜だけずるい〜〜〜!」
「おいらも琴音と仲良くしたい〜!!」
「翔夜にいちゃんのバカーーーーー!私がいるのにーーーー!」
と、あれやこれやの大合唱が始まる。
いや・・・手・・・・離して・・・・
握られたままの手をどうしたらいいかわからない。
困って千鶴さんに助けを求めようとするも、月影さんとこちらを見てクスクスと笑うばかりで、助けてくれそうには見えない。
「おまえたちはもう少し大人になってからな!」
「琴音よりは大人だし!」
翔夜と名乗った青年は、私の手を握ったまま子供達と子供レベルの言い争いをしている。
そんな騒々しい空気の中、突然低い声が聞こえた。
「なんの騒ぎだ。」
その声を聞いた瞬間、その場は水を打ったように静まり返った。
(この声・・・)
昨夜の長老の忠告が頭をよぎる。
今朝も聞いたその声に振り返ると、蒼月さんの鋭い視線が翔夜を一瞬で捉え、彼の表情が微かに緊張したのを見逃さなかった。
周囲の空気が一変し、蒼月さんの存在感が広がる。
ゆっくりと騒ぎの中心をぐるりと見回し、それから私をじっと見る。
「・・・また、おまえか・・・」
蒼月さんの存在が近くに感じられるだけで、心臓がドキドキと高鳴る。この胸の高鳴りは何なのか、自分でもまだよく分からない。
呆れたようにため息をついた蒼月さんは、ふと何かに気づいたように視線を移す。
その視線を追うように私も視線を移すと、蒼月さんが見ていたのは、翔夜くんに握られたままの私の左手だった。
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