第27話

駆け足であったがために、専門学校に行くことを決めてからというものの、目まぐるしく準備が始まった。入学願書や自己PRを書き、面接の練習などを行っていく中で、これから自分はどんな専門学校での3年間の生活を送るのかとイメージを膨らませたほどだ。しかし、これまで就職一本で、他の大学のオープンキャンパスなどにも言ってなかった自分には、専門学校で自分がどんな生活をしているのかという姿が思い浮かばなかった。

学校の先生の協力をいただきながら入学準備は滞りなく進んでいたが、我が家での一番の弊害は、入学金や年間の学費の捻出であった。元々就職希望で、進学の『し』の字すらなかった我が家には、進学にかかる費用はなかったのだ。私学であるため、年間で150万近くの学費がかかるのだが、その捻出方法をめぐっては、おそらく両親も協議に協議を重ねたことだろう。

学校の友人たちにも、専門学校に行くという報告をしたが、就職で脚本家になる予定だったと思っていただけに、高確率で進学という道を選んだことを驚かれた。それでも、脚本家というゴールに変わりはなく、応援をしてくれている友人たちに感謝しかなかった。


入学願書と自己PRを専門学校に送り、あっという間に面接当日がやってきた。学校近くの喫茶店で母が待機する中で、僕は学校へ足を運んでいく。校内に入る前に、僕はグループLINEで『これから面接行ってきます!』とメッセージを送った。友人たちは『頑張って!』とコメントを返してくれた。

家族や友人が見守っていると自分に言い聞かせ、僕は控え室に案内された。この日は他にも数人、面接希望の高校生がいたようだった。筆記試験はなく、学校職員との面談のみという比較的簡単なものであったが、それでも先方に対して、学校に入ってどんなことを学びたいかという熱意を伝えなければいけない。控え室で待機している間、僕の鼓動はずっと鳴り続けていた。

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