第26話
周囲の友人たちがAO入試や就職試験に合格し進路が決まる一方で、就職試験に落ちたことで急遽進学に進路変更する者もおり、学校祭終了後からクラスでは落ち着かない日々が続いていた。僕も脚本家になるために、シナリオ教室の通信教育で学びながら、制作会社に原稿を売り込むという、独自路線で進路を決めようとしていたが、これもなかなか決まらなかった。
高校生から突然脚本家として道を切り開くことはやはり難しいのか、まだまだ自分には実力不足なのかと思い、もっと脚本家としての技術を学ぶところはないかと僕はパソコンでシナリオの学べる学校を検索した。すると、名古屋のデザイン系の専門学校の中で『シナリオライター専攻』という学部がある学校を見つけた。早速資料請求をし、学校の概要を調べる。講師が業界の専門家であることと、授業がより専門性の高いというところに、僕は魅力を感じていた。
秋が深まる11月の半ば、僕は母の引率の元、専門学校のオープンキャンパスへ行った。体験授業では、コピーライターを本業としている先生が担当をしてくださり、好きな作家やジャンル、将来は何になりたいかなどを、僕や他に体験に来ていた高校生たちに聞きながら授業を進めてくださった。直木賞と芥川賞の違い、クリエイターとして必要な資質など、実務的なことではない授業が印象に残った。この授業で僕が気づいたのは、脚本家になるためには、シナリオの技術ではなく、もっとクリエイターとして本質的なものを学ぶ必要があるのではということだった。
ちょうどオープンキャンパスの直前、仕事で福岡に単身赴任をしていた父が満期となって戻ってきたこともあり、僕は両親と三人で進路について相談をすることができた。父は、放任主義とまではいわないが、基本的に反対するような人ではなかったので、専門学校に進むことも特に反対はしなかった。それから数日後、僕は担任に専門学校へ行くことを告げた。
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