第23話

7月に入り、夏真っ盛り。1学期の期末考査も何とか終わり、検定試験勉強と生徒会役員の仕事、そして脚本家に向けての活動に力を注ぐ毎日が続いていた。僕はこの頃、副担任からの勧めで、国家資格のITパスポートの受験勉強も始めていた。もはや、何足の草鞋を履いているのか知れやしない。時期が時期ということもあり、就職試験に向けて勉強中の者もいれば、僕のようにひたすら脚本を書いて売り込むという自己就職活動を進めている者もいた。進学希望の者は、AO入試の願書提出が近くなっており、脚本を書いているからという理由で、僕に自己PR文の相談をしてくる友人もいたほど。

それぞれがいろんなことに追われている中で、僕は思いがけず、クラスメイトと交際しているというデマが教室内で流されていたことを聞かされた。男子と女子が話しているだけで、そんな誤解をされるなんて、うちのクラスは何と程度の低いものかと、我がクラスながら噂を流していた男子たちに呆れたほどだ。


この事が原因だったのか定かではないが、しばらくの間、僕は虫の居所が悪かった。ちょうど、クラスメイト達と、月に1回の生徒会主催によるごみ拾い活動をしていた時のことである。学校近くの民家で飼っているドーベルマンが2匹、大きな声で吠え始めた。友人の話では、ここの飼い主の女性は、何故かいつも叫んでおり、学校に文句を言ってくるクレーマーだと言う。姿は見えないが、女性が何かを叫んでいる声だけは聞こえてくる。怒りの沸点を越えてしまった僕は、その姿の見えない女性に向かって暴言を吐いて反論をしてしまった。

一緒にいた友人たちが、見かねて僕をそのまま学校に引きずり戻したことで事なきを得たが、学校に戻ってからも僕のイライラは収まらなかった。通りかかった先生からも、僕が怒るなんて余程のことだ、と珍しがったぐらいだった。少し時間が経つと、何と自分は愚かだったのかと恥ずかしくなった。

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