第20話

この年のバレンタインは、バラエティに富んだラインナップとなっており、僕もチーズケーキやチョコケーキを作っては、同じクラスにとどまらず、よそのクラスや職員室の先生方にもお菓子を振る舞った。友人は、わさび入りシュークリームを作った子もいれば、市販のケーキやお菓子を配る子もいて、昨年以上に盛り上がったバレンタインだった。

ここ数年で『友チョコ』や『逆チョコ』が流行したこともあり、2月14日に男子も用意することは特に違和感がなかった。また、ホワイトデーの3月14日は、高校受験の一般入試と日程が被り、高校が休みになるため、お返しを渡す時期がズレてしまう。『友チョコ』の流行は、僕らにとっては大変都合の良いものであった。


一般入試も終わり、昨年以上に紆余曲折で波乱だった1年間の学校生活が終わった。とうとう、最後の高校生活、3年生のスタートだ。1年生の頃の担任が再び担任として戻ってきたこと以外は、何ら変わらない環境である。2年生後期に務めた男子学級代表も、そのまま3年生の前期も続けることになり、通算1年間学級代表をする計算となる。3年生になり、部活も夏で引退。副部長の任期も残り僅かとなった。

クラスの男子学級代表、部活の副部長という活動が続く中、僕はもう一つ、最後の挑戦をしたいことがあった。それは、生徒会選挙。2年の後期に僅差で落選した後、思いがけず親友だったKが学校を退学。その時、「俺の分まで学校生活を楽しんでくれ」と言ったKとの約束を果たすためにも、生徒会選挙にリベンジしたいと思ったのだ。だが今回も、経験者たちが対抗馬となり、3人のうち1人が落選するという状況だ。半年前の落選時のショックが再び起こるのではという不安もあった。推薦演説者をどうしようかと思っていた矢先、昨年の学校祭実行委員会で一緒だった元生徒会役員のMが、「私が推薦演説になる!」と教室まで来てくれて、僕は思わず唖然となった。

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