第18話

夏休み前から始まった校舎の耐震工事が無事に終わり、3学期が始まるタイミングで、僕らは一時的にお世話になっていた定時制の教室から、再び引っ越しをすることになった。約半年ぶりに、かつての2年2組の教室に戻ってきたのである。

やはり、普段定時制が使っている教室だったため、どうも自分たちの教室という空気で楽しめている実感がなかった。だが今日から、また元の教室での生活が始まった。

冬は乾燥しやすい時期でもあり、この頃の僕は検定勉強や脚本執筆に没頭しており、体調を崩すようになっていた。

特に咳が止まらなくなることが続いていた。咳だけならば何とか耐えられたのだが、ある日は倒れそうなぐらいに顔面蒼白になっていたことがあり、そのままクラスメイトに保健室に連れて行ってもらった。体温計で熱を測ったら三十八度あり、母親に迎えに来てもらい、早退したその足で病院に行ったら、胃腸風邪と診断された。


幸い大事には至らず、1日休んだ末、僕はまた学校に復帰した。ちょうどその頃から、学校では月末に控えたマラソン大会の練習が始まった。体を動かすことはおろか、『体育』という文字を書くことが嫌いな僕にとって、このマラソン大会の練習も本当に苦痛だった。小学校時代、運動会のかけっこは6年間ビリだったし、マラソン大会もビリもしくはその1個か2個前。「体動かすぐらいなら、頭と口を動かしておきたい」というタイプだったので、同じく運動が苦手なクラスメイトと共に、周回遅れになりながらも、何とか練習に参加した。とにかく、一日も早く終わってほしい気持ちでいっぱいだった。

それから数日後の深夜。明日学校があることを分かっていながら検定勉強をしていた僕は、突然下腹部の激痛に襲われる。脂汗をかき、歩くこともままならない状態だ。そんな異変に気付いた家族が慌てて救急車を呼び、僕は人生で初めて担架に乗せられ、病院まで救急搬送されたのだった。

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