第17話
Kが学校を辞め、僕は凹む毎日が続いていた。他のクラスメイトたちと話している時も、どことなく元気がない。部活にも身が入らず、IやHやMに心配をかけてしまっている。年の瀬が近い中、まるで季節と比例するように、寒く冷たい時間だけが、淡々と流れていった。
そんな状態になっている僕を、友人たちは励ましてくれた。ブログでコメントをしあっているHからも、落ち込んでいるのはらしくない、と言われた。今のままではいけないということは分かっていたが、それでも身体が動かなかった。だが、励ましてくれたHには、一つ感謝していることがあった。それは、執筆しようと思っている新作のネタになったのが、Hが自身のブログでアップした『木漏れ日さす木』の写真だったこと。その写真を見て、インスピレーションを受けた僕は、原稿用紙の表紙に筆ペンで『木漏れ日さす木』と書いていた。
新作を書こうと思っていた矢先に、Kの一件があったので、僕は、本文がまだ1枚も書けていない状態だった。落ち込んでいる時こそ、何か没頭できるものを……そう考えると、やはり僕には書くことしかなかった。シャーペンを握り、原稿用紙を広げ、1マス1マスに文字を埋めていく。まるで、何かに取りつかれているかのように。授業とはまた違う、何とも言えない体力の消費を感じながらも、200字詰原稿用紙に向かって書き続けていた。不思議なことに、その間は学校のことも、部活のことも、そしてKのことも、何もかも忘れてしまうほどだった。
2週間が経過し、僕は1時間ドラマ1本分である120枚の原稿用紙を書き終え、教室でHに書いた原稿を渡し、新作を書くに至った経緯を伝えた。じっくり読ませてもらうから、とHは原稿を受け取った。
創作活動をする時間と、僕の作品を待ってくれている人たちのおかげで、いつの間にか立ち直ることができた。波乱続きの2年生の2学期も、間もなく終わりを迎えようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます