第16話

Kが突然生徒指導室に連れていかれたことで、僕はとにかく心配だった。携帯電話に連絡しても繋がらず、何があったのかと気がかりだった。翌朝学校に登校すると、クラスメイトから、生徒指導主任のA先生が呼んでいたと聞かされ、僕はそのまま生徒指導室へ向かった。

呼ばれた理由は、当然Kのことだった。僕はとにかく、Kが何をしたのかということが気になって尋ねた。A先生は、Jの書いた女性蔑視ともいえるブログ記事に、Kが賛同するようなコメントを書いていたことを教えてくれた。が、A先生は他にも、Kのことを調査していた。無断バイトをしていること、煙草を吸っていること、競艇をしていること……当然全て、規律違反である。お互いの遊びに行ったこともあるし、普段行動を共にしているので、Kが違反行為をしていることはもちろん僕も知っていたが、友人の行動をチクるようなことはしなかった。結果的に、Kは謹慎になり、僕の周囲の雰囲気はまた暗くなってしまった。


Kからの着信があったのは、それから一週間後のことだった。携帯電話が生徒指導部に没収されていたために連絡が取れなかったということを知ってホッとしたのも束の間で、僕はKから「俺、学校辞めるよ」と、とんでもないことを聞かされた。

Kは、もう一度謹慎になったら学校を辞めると決めていたそうだが、僕にとってKはクラスにおいて欠かせない存在である。Kは規律違反もしたし、Jのブログに賛同コメントをしてクラスの女子を敵に回したのも事実。だが、やはりクラスの友人を失うのは辛く、僕は電話越しに、必死で彼を説得する。それでも、Kの決断は変わらず、改めて己の不甲斐なさと、クラスメイト一人の心も動かせない力不足を痛感した。

11月の初旬、僕が17歳の誕生日を迎えて間もない頃に起きたこの出来事は、大きなショックで、僕は部屋で泣き崩れた。それからしばらくは、吐き気や嗚咽の止まらない体調不良な日が続いていた。

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