第15話

Jが学校を辞めたという話に衝撃を受ける間もなく、生徒会選挙は刻一刻と迫っていた。普段、どちらかといえば登校時間ギリギリに学校へ行く僕だったが、選挙活動が始まってからは、なるべく早めに学校へ行き、校門前に立っては「おはようございます。皆さんの清き一票をよろしくお願いします」と街頭演説さながら、登校していく生徒たちに声をかける。

生徒会書記は枠が2つに対して、立候補者は僕を入れて3人。つまり、この中の誰か1人が落ちるということになる。しかも不利なことに、対抗馬のうちの1人は上学年の先輩、もう1人の対抗馬は現役の生徒会役員。立場上、俗に言う新人立候補者は僕だけ。普通の政治家の選挙と違い、生徒会選挙は投票する生徒たちにとってはそこまで興味のないもので、おおよそ上学年や経験者という比較的立場の良い人に票が入りやすいのが傾向。だからこそ、僕は必死だった。初めて選挙に出る当事者となって、立候補をして票をいただく苦労が骨身にしみていた。

選挙演説が終わり、翌朝、クラスの掲示板に開票結果が張り出される。友人たちと恐る恐る、結果を見る。僕は、僅か6票差で落選。一瞬、目の前が真っ暗になったような気がした。自信はなかったが、その中でも微かな希望があればとも思っていた。友人たちは、僕に気を使って、僅差ということはそれぐらい僕に票を入れてくれた人がいたんだと慰めてくれた。その友人たちの恩情が、僕には嬉しかった。


結果は良いものではなかったが、生徒会選挙に挑戦をしたということは、僕にとって良い経験になったと思うことにした。だがそんな中、Kから連絡をもらった僕は、学校を辞めたJが情緒不安定になって書いたと思われるブログ記事を発見。女性蔑視ともいえる内容で、それを見たクラスの女子たちはカンカン。新たなトラブルの火種になるだろうと思った矢先、生徒指導室に呼ばれたのは何故かKだった。僕には状況が理解できなかった。

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