第10話

Jがクラスを変えることは正直悲しかったが、それを素直に僕に報告してくれたことは嬉しかった。しかし僕が情報処理検定に無事に合格し、3学期も残り僅かの中、Jが教室に姿を現したのは、ほんの数回に過ぎなかった。が、これはJが決めたことだったし、僕も無理に学校に来る必要はないと思ったため、強制はしなかった。

検定合格と前後し、世間はバレンタイン一色だった。この頃は『逆チョコ』や『友チョコ』が顕著で、2月14日は男女問わずお菓子を用意していた。家庭科が好きだった僕は手作りのパウンドケーキを用意し、クラスの面々に、飴を配る大阪のおばちゃんのように、配布する。そして、共に検定勉強を頑張るI、M、そしてHの元に届けに行ったのだが、ここで発覚したのが、Hが同じクラスの友人たちに対して、僕のことを「ダーリン」と呼んでいたこと。案の定、数多くの同級生たちにとんだ誤解をされていた。


謹慎になっていたSが、思いのほか早く謹慎が終わったことで、KやSと共に1年生の1年間を何とか終えることができた。担任から配られた通知表を見ながら、新たなクラスメイトたちの出会いから始まった高校1年生は実にあっという間の体感だったと振り返る。

春休みに入り、いつも通り宿題をしていると、一件のメールが届いた。Kから届いたそれには、モヒカンの写真だけが一枚添付されていただけだった。メールで聞き返すと、どうやらKが美容院でモヒカンしてもらったらしく、その写真を送ってきたのだ。思わず僕は、同じくクラスメイトのNに写真を転送して、新学期早々にどうなるのかという話題で持ちきりにになった。

始業式前日の出校日、案の定ワックスを取った状態で登校したKの髪型は明らかに不自然で、生徒指導の対象となり、翌日までに整えてくるようにということだった。相変わらずてんやわんやな日常が2年生からも始まるのだと、僕は呑気そうに生徒指導室から出てくるKを見て思った。

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