シーン2 私のひみつは……

 SE:ペン先を走らせる音


 ぁ。これ。ん……? うん……、あれ。おかしいな。


 えっと、もう一度……、え、なんでだろう……。

 ……ううん。そう。きっとそう。だからもう一度……。


 SE:ペンを走らせる音


 ああ、また。どうしよう……。

 演技:泣きそうな悲観的な声


 えっ(演技:驚き)あ、ううん。ごめんなさい……、うるさかった?

 ううんそうじゃないの。ちょっとどうしても計算が合わない所があって……。 


 うん。え、見てくれるの? 

 えっと、じゃあ、そっち行っても、いいかしら……。


 演出:接近・至近距離。


 ここ、見てくれる? 物品の会計関係の書類なのだけど、どうしても計算が合わなくて……。まとめてくれたのは毎回ちゃんとやってくれる子だから私が間違っていると思う、のだけれど……。


 うん。うん。うん……。そう、そうね。ここがこう来てこう。

 うん。うん。そうね……。


 え、(演技:驚く)ここ? あーぁ……、じゃあやっぱり私のミスだ。

 うう、こんな凡ミス……。


 はぁ……、私ほんとうに数字に弱い……。

 だめね。こんな事じゃ生徒会長としてみんなの模範もはんになれないわ。

 

 落ち込みすぎ、たかが計算ミスぐらいで……。って、うん。そう。そうなんだけれど。


 ……えっとね。あなたにだから告白するのだけれど。私、数学が本当に、ほんっ……とうに苦手で。どれくらい苦手かっていうと……。


 SE:ごそごそ


 これ……。


 SE:紙の音


 演出:しばらくの間


 ――だ、黙らないでぇ!


 これは確かに、危機感を感じる? ミニテストの答案としてはかなり衝撃を受けた……? ううう、そう。そうなのよ。だから今、余計に落ち込んでいて……。


 はぁ……。本当はこういう会計関係の書類仕事はしたくないのだけれど。できれば数字も見たくもないのだけれど……。


 ……駄目ね。あなたも知っている通り、うちの生徒会には会計がいない。

 私が前生徒会長に推薦すいせんされた時も、立候補が無かったから。


 うん。そうね。うちはスポーツが盛んな学校だけど、だからこそ文化部がおざなりなのよね。書記の佐々木さんもバトミントン部と兼任だし。それも今は大会中で来られないし……。

 

 だから生徒会室はいつも私とあなただけで……。


 うう、本当に迷惑ばかりかけているわね……。自己嫌悪が……。

 本当にごめんなさい。私にもっと人望があったら……。


 え、じゅうぶん人望はあるって? みんなに頼られてる?

 ……ううん。それは違うわ。私が断らないからみんな頼みやすいだけよ。


 あ、嫌じゃないのよ? 私は何の取り柄もないつまらない人間だから、みんなが頼ってくれるのはうれしい……というのもあるの。


 でも、うん。そうね……。


 演技:ぼそり 


 あなたが、いてくれるから、頑張れてる……かな。








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