5「追跡」

次の日


両親の検査入院二日目。

家で、あやとはクロと話しをしながら、朝ご飯を食べていた。


ご飯、豆腐の味噌汁、卵焼き、プリンだ。

クロは、まぐろ風のキャットフード。


「今日は、外を少し回るよ。」

「人間一人と一羽いるにゃ。」

「一羽?」

「そうにゃ。あれは、鳥の気配にゃ。」

「鳥か。だからか。空から見られている感覚があった。」

「そうにゃ。」


話しが終わり、少し休んでから、鍵をかけて家を出る。


しばらく歩くと、やはり、見られている感覚があった。

後ろを振り返って見ると、何かいるのを感じた。

人であるが、姿を現さない。


「あれか。」

「そうにゃ。」


クロは、あやとの肩に乗って、同じく後ろを向いて、確認した。


「いっそう、こちらから出向いて、確かめる?」

「それをすると、空から狙っている一羽が攻撃しかけるにゃ。やるなら、一羽を拘束してからだにゃ。」

「そうか。なら、一羽はクロに任せて、俺は人を。」

「それならいいにゃ。」


あやとはクロを地面に下ろして。


「クロ、後でな。」

「あやとこそ、後でにゃ。」


自分の役割をする。

あやとは、今まで付けて来た人を追いかけている。

クロは、一羽を追いかけている。


追いかけ詰めた先は、ビルとビルの間だ。

この左右にあるビルは、何が入っているか分からないが、キツメブランドという看板が見えた。


「追い詰めたぞ。一体何が目的だ。」


あやとは、その人物を見ると、黒っぽい恰好をしていた。

今の時期は、秋でポンチョにフードでも、別に変じゃないが、それでも見るからに怪しい恰好をしている。


「えーと、私は、その……。」

「まず、顔を見せてからだ。そのフードを取って話しをしよう。」

「え?でも。」

「でもじゃない。」


あやとは、一歩、その人に近づくと。


「わかりました。」


フードを取った。

フードの下から見えたのは、黒い髪をして、みつあみを二つにして、黒淵の眼鏡をしていた。

顔立ちは、前髪が長いので、暗いイメージがある。


「へー、結構、いい顔してんじゃん?」

「見ないでください。」

「で?どうして、俺をこの所、付け回していたんだ?」


みつあみを、前にたらし、手で触りながら。


「貴方も黒神から仕事を貰っている人ですか?」

「も?ってことは、君もか?」

「はい。ですので、同じ仕事をしているなら、悩みを訊いてくれると思いまして。でも、話しかけるタイミングがなくて、その、つい、ストーカーみたいなことになってしまって、ごめんなさい。」


同業者か。と思いながら、一息ついた。


「で、なんの悩みなんだ?」


あやとは、相手の顔を見た。


「そ、その前に、自己紹介させてください。私は、花都黒香はなとくろか。」

「俺は、黒谷あやとだ。あやとでいい。」

「では私も、黒香でお願いします。」

「で、その黒香さんは、何を悩んでいるのかな?」


黒香は、黒神と会った時の話をした。






黒香は、疲れて眠っていたが、目を覚ますと、そこには一羽のカラスがいた。

カラスは、黒香を見つめていた。

いきなりでおどろいて、動けなかった。


一羽のカラスを連れていたのは、黒神であった。

とても手慣れた様子で、カラスを可愛がっている。


その様子を見て。


「花都黒香さんですね。」

「は、はい。」

「よかった。目を覚ましたのですね。」

「貴方は?」

「私は、黒神。黒い物の味方です。貴方に、依頼があります。」

「依頼?」


カラスを黒香の頭に乗せると。


「人間の頭に動物の耳が付いている人を見かけたら、そのカラスで身体の一部、どこでもいいので突っついて欲しいのです。」

「え?」


訊くと、人間は企む黒い心がある。

それが増えていくと、頭に動物の耳が出て来ると訊かされた。

最高神は、自分が作った人間が悪い企みをしているのを、とても残念がっていた。

だから、浄化を頼みたいと言ってきた。






あやとは、そこまでは猫とカラス以外は、自分と同じだと思い、訊いていて。


「で?何が、悩みなんだ?」

「実は、一人も浄化出来ないままなのです。」

「え?」

「ですので、その方法をあなたから探れないかと思い、見ていました。」

「なるほどね。」


そこまで話しをすると、クロがあやとに向かって走ってきた。

クロは、カラスを頭の上に置いている。


「クロ。」

「話しは、このカラスからも訊いたにゃ。」

「その様子だと、カラスと仲良くなったのか?」

「もちろんにゃ。にゃー。」


すると、カラスも人の言葉を話す。


「この猫、貴方の猫カー。」

「そうだよ。」

「とても、話しが分かる猫で良カー。」

「そうなの?」

「そうカー。猫は、私を遊び相手にしか見ていないと思っていたけれど、クロさんは違って、話しをしてきたカー。」


そこから、四人?四生物と話しをした。

結果。


「黒香さんが、がんばるしかない。」と結論になった。

それには、カラスと協力が必要で、一緒に会話をしたり、ご飯を食べたりして、共有をしなくてはいけないと話した。


「わかりました。まず、カラスと生活してみます。」

「それがいいでしょう。所で、カラスに名前を付けないんですか?」

「はい。」

「名前を付けると、受け取り方も違ってきますよ。」

「え?でも、どうしよう。」


会話出来るからといって、今まで「カラス」とでしか、声をかけていなかった。

連絡先を交換して、あやとと黒香は別れた。


クロは、もう少しカラスと遊びたかったみたいだったし、カラスもクロともっと話しがしたかったみたいだ。

だから、カラスから会いに来るといい、クロは自分の家で待つと、約束をした。

もし、クロがカラスと話しをしたい場合は、一言鳴いてくれれば駆けつけると言ってくれた。


クロにとっても、よい収穫を得られた。


「よかったな。クロ。友達出来て。」

「本当にゃ。この年で、友達出来るなんて、思わなかったにゃ。とても嬉しいにゃ。」

「会いに来てくれるって言っていたから、どうしようか?庭、綺麗にしておく?」

「そうにゃ。庭を綺麗にして、待っているにゃ。」


クロを見ると、とても嬉しがっていたから、あやとも嬉しかった。

意思疎通の能力ではない。

本当に、クロが喜んでいるのを見て、とても嬉しかった。


「さて、クロ。帰ろうか。」

「にゃー。」


クロが人間の言葉を離さない時には、周りに人がいる証拠。

周りに人がいるのを、クロは匂いと気配で分かるらしく、感じていた。

今は「にゃー」だけだったから、その場から去ろうとした時、ビルの主か、わからないが人が扉から出て来た。


人は、このビルに勤めている人らしく、エプロンをして、ゴミを出しに来ていた。

その人にジッと見られる。


いたたまれないあやとは。


「家の猫がここに迷い込んでいたので、入らせてもらいました。」


説明をして、クロを見せると、その人は納得した顔をして、ビルの中に入って行った。

ビルとビルの間から出る。


瞬間、クロが反応をした。

その方面を見ると、そこには男性がいた。

男性の頭には、熊の耳がついていた。


「あの人か。」

「にゃー。」


男性は、スーツを着ていて、眼鏡をしていた。

横から見た感じだと、とてもいい好青年に見えるが、企みがあるのか。

あやとは、一度、企んでいる人の内容を訊いてみたかった。

しかし、仲良くなると仕事がばれる可能性があり、やめておいた。


クロが男性の足首をかむと、頭の耳は消えてなくなった。

男性を見ていると、何かやろうとしていた事が分からなくなったみたいに、うろうろし始めた。

つい、声をかけてしまった。


「どうかしましたか?」

「すまない。私は、どうして、ここにいるのでしょうか?」

「は?」


話しを訊くと、何かをする為に、この町に来たのだけれど、それが全く思い出せないだった。

しばらく、何気ない会話を続けるが、内容が思い出せなかった。

思い出せない内容なら、大切な用事で無かったとなり、この町を去ろうとした。

その男性を見て、手を振り。


「お気をつけて。」


一言しかでてこなかった。


「これで良かったのだろうか?クロ。」

「良かったと思うにゃ。」


会話をして、家へと帰った。

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