第3話 キミとの花火大会

「花火・・・きれいだね」

「うん、すごいきれいだ」


僕は花火ではなく、キミの横顔を見ていた。


僕らが出会ったのは、ある夏の日のことだった・・・


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「おい!カケル!早くしないと電車乗り遅れちゃうんだから早くいくぞ」

「悪い悪いシンゴ!今靴ひもを結んでるとこ!」


高校2年生である僕、”斎藤翔さいとうかける”は親友の”猿渡慎吾さわたりしんご”と毎朝、電車で通っていた。


その日も、何も変わらずいつものような朝だった。彼女と出会うまでは。


「ほんとこの電車って冷房の効きが悪いよなー?実家のオンボロエアコンのがまだ涼しいぜ。ほんと電車関係の奴らは高い金貰って何してんだかなぁ?」


シンゴはお調子者でクラスの人気者ではあるが、発言には思いやりがないことも多く、唯一その部分だけは好きになれなかった


「いや、多分なんかの理由で出来ないんじゃないかな?例えば・・・ほら申請が必要とか?それに時間かかるとかね」

「ふーん?よくわかんねぇけど直して欲しいところだよな全く」


そんなこんなで、2駅目に到着した。僕たちは各駅停車の電車に乗り、5駅先の”新前山駅”で降りる。毎朝、約40分ほど電車に乗っている。


「次は、次は、大久橋~大久橋。足元にご注意してお降りください」


大久橋駅に到着した。この駅は乗ってくる人もまずいない田舎の町で、内心止まって欲しくはないと思っている。

車両の中よりもドア付近のが、涼しいのもあり、僕はドアの前に立っていた。


プシャァァァァァ (ドアが閉まる音)


「駆け込み乗車はご遠慮ください!!!」


車掌が叫ぶ声がする。その瞬間、僕に鈍い衝撃が走った。


「いてててて」

「あたたたた。あぁぁすいません!!遅れそうになっちゃって急いでて前見てなかったですっ!!お怪我はないですか・・・?」


これが”山下来夏やましたらいか”との初めての出会いであった。


「こらこらお嬢ちゃん、ダメじゃないか!駆け込み乗車は危険だから、今後はやめてよね」

車掌が電車を停めて注意しに来た。田舎のローカル線なためか、こうした光景は何度か見たことがあった。


「すつすいませんでした!!次からはちゃんと時間考えますので、申し訳ありません!!」

彼女はそういうと、深々と頭を下げた。


「わかればいいんだよ」


そういうと車掌は、運転席に戻って言った。


「先ほどはぶつかっちゃってごめんなさい。私は東雲学園2年の山下来夏と言います。これが家の連絡先なので、もし怪我あったら電話して下さい。母には私が説明しますので」

「いやいや、僕は大丈夫だよ!山下さんこそ大丈夫?凄い盛大に転んでたけど(笑)」


「間もなく、ドアが発車いたします。ドアが閉じるまでしばらくお待ちください」

車掌が再度アナウンスをした。


プシャァァァァァ (ドアが閉まる音)


ダッダッダッダッダッ


その瞬間、何やら黒い野球の服を着た男性が階段から猛スピードで走ってくるのが見えた。


「おいおい、流石に間に合わないだろ」

お調子者であるシンゴですら、真面目に呟く。


「駆け込み乗車はご遠慮くださーーーーい!!!!」


二回目の駆け込み乗車の客に対して、流石の車掌も切れ気味であるが、お構いなしに黒い野球の服を着た男は走ってくる。


「かなり際どいッ!彼がこのまま走っても、ギリギリ間に合わない・・・何か、何かが一つでも違えば・・・」


僕がそう言ったたその瞬間、黒い野球の服を着た男は頭から滑った。


ズシャァァァァァ


「せっセーフ!!」


主審が判定をコールした。



あの日、来夏と合えたこと、確実に間に合わないであろうタイミングを完璧なヘッドスライディングによりセーフをもぎ取ったこと、この2つの奇跡を僕は一生忘れないだろう。

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