片想いしているクラスメイトの女の子が毎朝電話をかけてくるようになった。

（8）6月18日 火曜日

　着信アラート音。画面上の『応答』表示をスワイプする。

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「おはようございます。6月18日火曜日、午前7時くらいをお知らせします」

「というわけで犬童（いんどう）です。今日もベッドの上で丸まったまま電話をかけているわたしのわたしによるあなたのためのモーニングコールです」

「────。なんですか、それ。『犬童さんって、冗談言うんだね』って。そりゃ、言いますよ。わたしのこと、ユーモアの欠片（かけら）もないカタブツ女だと思っていませんか？」

「さて、毎日こうして話していると、ただでさえ少ない話題がさらに少なくなりますね。今日は宿題もありませんし、英語の予習もありません」

「というわけで切ります」

「────。はあ、好きな飲み物の話ですか。そういえば昨日、そんな話をしていましたね」

「わたしは甘ったるい飲み物が苦手です。買うものといったら、お茶か水かコーヒーか。あなたは──いつもお昼休みに絶望的に甘そうなブランドのミルクティーを飲んでいますよね」

「趣味、合わなそうですね」

「────。えっと、無糖のコーヒーも飲んでみるって？　あの、まあ、嗜好品ですし、無理せず好きなものを飲めばいいと思いますけど」

「ただ糖尿病とかのリスクを考えると、若いうちから甘い物は控えた方が健康には良いでしょうね」

「さて、そろそろ切りますね──あ、その前に。大事なことを言っていませんでした」

「今日は午後から雨ですよ。傘、忘れないようにしてください。この前、天気予報が外れて晴れたこともありましたけど、まさか今回も予報が外れて晴れると思ってはいませんよね？」

「では、学校でお会いしましょう」