(7)6月17日 月曜日

 着信アラート音。画面上の『応答』表示をスワイプ。この犬童いんどうさんからのモーニングコールは、これ自体が大事なイベントになっていた。



***



「おはようございます」


「犬童です。今日は月曜日、不幸にも始まってしまった新たな一週間の尖兵とも言える最初の一日です。ちなみに本日の不幸──もとい本日が提出日になっている宿題は、古文です」


「あ、土曜日は誤爆してしまい申し訳ございませんでした」


「────。『土曜日なのに犬童さんの声が聞けて良かった』ですか。あまり露骨なお世辞は、言われても嬉しくないですよ」


「ところで、窓の外は見えますか? 今日も雨みたいです。昨日も雨でしたし、多いですよね。まだ梅雨入りはしていないみたいですけど」


「蒸し暑くて嫌になりますね。では──どうせ古文の宿題をやっていないあなたのために、早めに学校に行く支度したくをしましょうか。お互い」


「というか、この謎の係はいつまで続ければいいのでしょうか。『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番を見守る会』の人は、いつも笑顔で缶コーヒーを渡してくれるんですけど、いったい誰が出資しているんですかね。というか、あのキラキラな笑顔はなんなんでしょうか」


「────。はい? ええ、まあ、コーヒーは好きですよ。なんのこだわりもないですし、ブラックならなんでも構わないというレベルですけど」


「そういうあなたはなにが好き──あ、長話をしていると古文の宿題をやる時間がなくなってしまいますね」


「雨とはいえ、今から急げばホームルームまで十五分は確保できます」


「わたしも急ぎますね。あなたのために急ぐんじゃないですよ。コーヒーのために急ぐんですよ」


「それでは、学校でお会いしましょう」

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