(6)6月15日 土曜日
今日もいつもの着信アラート音が鳴り響いた。
画面上の『応答』表示をスワイプする。聞こえてくる声も、当然のことながら、いつもの
***
「おはようございます」
「犬童です。そして早速ですが、申し訳ございません」
「今日は土曜日ですね。寝惚けていて、寝坊したと思って、慌てて電話をかけてしまいました」
「今日は何万時間眠っていただいても問題ないですよ。これから二度寝どころか、百万回くらいは寝直していただいても大丈夫です。月曜日にちゃんと起きてくれるなら、ですけど」
「お邪魔いたしました」
「────。はあ、『昨日はありがとう』ですか。どういたしまして」
「なんか、あなたの英語の予習を手伝うのも、わたしの仕事になっていましたね」
「『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番を見守る会』が勉強お手伝いコーナーを作ってくれていましたからね。なんなんでしょう、彼女たちは」
「しかしあなたの──その緩いんだが太いんだか分からない神経はどうにかならないんでしょうか」
「英語の予習だけじゃなくて、世界史の宿題もやっていなかったんですよね」
「────。そうですね。学校に行ってからやろうと思っていたのは知ってますけど。ただ今回は、一応は宿題をするために資料集を家に持ち帰っていて──その資料集を家に置いたまま学校に来てしまったんですよね」
「確かにこれは、『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番』に間違いないですよね。わたしは、見守りたくはないですけど」
「宿題はちゃんとやりましょう。学校に行ってからやろうって思わないでください」
「昨日は手伝いましたけど、次は期待しないでくださいね。せめて課題は一つにしておいてください。そしてちゃんと焦ってください。わたしの方ばかりが慌ててしまってなんだか馬鹿みたいじゃないですか」
「来週は気をつけてくださいね。では──」
「────。はあ、まあ、そうですね。『今日は学校ないし、ゆっくり話できるよ』って、そうですけど」
「もう話すこともないですし、長話すると通話料もかかりますし」
「では切りますね。また来週学校でお会いしましょう」
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