45 フォンレスト攻防戦05
不死鳥となった俺は邪霊を追いかけた。
街の中に入り込んだ邪霊は、そのでかい四肢で家を踏み潰し、嘴みたいな顎で人を捕まえて噛み砕く。
骨の砕ける音と肉を咀嚼する音がこれみよがしに外に漏れている。
クチャラーだ。
「汚ねぇな!」
俺は叫び、急降下キックを浴びせる。
これで本当に不死鳥みたいな形だったら、翼に見合った爪で掴んで街の外に落とすんだが、不死鳥要素は炎の翼だけなのでそんなことはできない。
仕方ないので追い討ちで【衝撃邪眼】を浴びせる。
あっ、違う。
セイナにもらった神気の影響でスキルも変化している。
いまは【衝撃邪眼】ではなく【聖撃神眼】となっている。
なんか目から放たれるビームがちょっと荘厳になっている気がする。
どう違うのかと言われるとよくわからないが。
あっ、一つあった。
敵である邪霊以外は破壊しない。
なんか、倒壊した建物に巻き込まれて動けなくなっていた人たちが、急に動き出している。
怪我でも治ったか?
邪霊は俺を敵だと認めて襲いかかってくる。
その爪や牙を空中でひょいひょいと避ける。
翼に当たってもちょっと乱れるだけですぐ元に戻るので、本体である俺に当たらない限りは問題なさそうだ。
【聖撃神眼】が痛かったのか、邪霊の装甲部分に焦げのようなものができて、いまだに元に戻っていない。
だから腹を立てているのか、俺が少しずつ上昇して街から引き離しているのにも気付かずに追いかけてくる。
そのまま、魔物の群れの上にまで移動した。
奴の上を取るように立ち回りながら【聖撃神眼】を放つ。
邪霊が避けたとしても、地上にいる魔物には命中する。
薙ぎ払えなビームとなって地上を滑り、爆発を生み、魔物を倒していく。
俺は神獣として、人間の味方、魔物の敵となっているので、俺の攻撃は魔物には痛打となり、人間には癒しとなる……ということか。
なんの敵になり、なんの味方になるか?
これは神獣という存在にとって重要な意味があるようだ。
一方的に攻めていた魔物たちは、この上空からの攻撃はたまらなかったようで、街に殺到していた動きに乱れが出てきた。
そして、邪霊の方も俺を追いかける動きに焦りが見えてくる。
こいつが召喚された存在なのだとしたら、召喚主への攻撃は意味があるだろう。
イビルウルフだったか?
やらしい顔をしていたが、空からの攻撃にはお手上げのようで逃げ惑うしかできていない。
「さて、と……」
この街の守護女神がずっと健闘していた敵たちだ。守護女神に敬意を表したいが、とはいえその戦闘時間を引き継ぐ気はない。
もう一つのスキルを使う。
神気を帯びて変化したこのスキル。
【神薬魔毒雨】。
俺の鳴き声が空を走る。
同時に、音は液体へと変化し、魔物の上に降り注いだ。
神が認めた存在には薬に、敵には毒となる雨が降り注ぐ。
魔物たちは一斉に苦しみ出し、絶命の運命を下されていく。
召喚主が命を絶たれると邪霊もその姿を消した。
さあ、これで終わり……じゃ、なさそうだなぁ。
俺は領主の屋敷へと飛んだ。
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