40 フォンレスト攻防戦開始
「魔物の襲撃だぁ!」
そんな声が俺たちのいる家にも届いた。
瞬間、ミラの顔付きが変わった。
「え? え? なに? こういう時、どうするの?」
「わからん」
俺とセイナは初めてのことなので、戸惑うばかりだ。
「こういう時、冒険者はまず冒険者ギルドに集合です!」
ミラが自分の剣を持って立ち上がる。
俺たちもそれに合わせて立ち上がった。
ティータは付いてこなかった。
当たり前か。
彼女は薬師で、冒険者ではない。
冒険者ギルドに到着すると、すでにギルドの中に入れないぐらいの人たちがいた。
ここには傭兵も集まっているようで、彼らはすぐに兵士っぽい人たちに従って移動していく。
しばらく待っていると、冒険者ギルドに入れるぐらいに人がいなくなった。
「やれやれ。傭兵ギルドと建物を合わせているのは、いい加減にやめんとな」
ギルドの広間には百人いるかどうかまで人が減って、彼らの前でギルドマスターが愚痴っていた。
「おお、お前らも来てくれたか。鉄等級だから来ないかもと心配したぞ」
と、俺たちを見てホッとした顔をする。
そういえば、俺たちの冒険者ギルドの登録証は鉄等級っていう一番下っ端のものだったか。
「来なくてもよかったのか」
「いや、来てくれないと困ってたぞ。お望みなら今からでも銅に上げたっていい」
俺の独り言をギルドマスターが拾う。
「おい、彼女たちはこの間の大蛇を討伐した冒険者だ! 侮るなよ!」
と、ここにいる冒険者たちに釘を刺す。
「知ってますよ」
「あの大蛇を一人で運べるような奴に喧嘩を売るのはただのバカだな」
「違いない」
と、皆が笑う。
「うう」
セイナが恥ずかしそうにしている。
「それで、ボクたちはどう動くんですか?」
「我々は偵察を兼ねて、街の外で魔物たちが一ヶ所に集まりすぎないようにする。攻撃が集中すると街の門や壁がもたんからな」
外で遊撃か?
「けっこう危なくないか?」
「まぁな。だが、俺たちが傭兵に負けないことを見せてやらないとな。そうだろう⁉︎」
「「「「おおう‼︎」」」」
俺の感想の答えは、地元冒険者たちの雄叫びなのだろう。
魔物と戦うことが当たり前の土地では、率先して戦うことが地元魂の現れなのかもしれない。
「まぁ、心配するな。俺たちには例の女神が付いている」
と、ギルドマスターが付け足す。
例の女神。
お嬢様のスキルとやらか。
一体どういうものなのか、この目で確かめるチャンスでもあるのか。
ともかく、そんな感じで戦いが始まった。
俺たち冒険者はギルドマスターの先導で、正門から出た。
そちらにはまだ魔物が来ていなかった。
街を出てから右回りに壁伝いに進んでいくと、すぐに魔物の咆哮みたいなものが聞こえた。
壁から少し離れ、魔境に踏み込みながら声の方に近づいていく。
やがて、奴らの姿が見えた。
「うわぁ」
セイナがそんな感想をこぼす。
そこには大量の魔物がいた。
オークもいるし、ゴブリンもいる。
空飛ぶ目玉みたいな、見たことがない不気味な魔物もいる。
そんな中で一際数が多いのは、四つ足の魔物だ。
狼と呼ぶには大きすぎる。
どれもこれもが昔、学校のイベントで牧場に行った時に見た牛や馬ぐらいはある。
色は黒く、牙の並ぶ口が長く、目はなんというか、獣よりも人に近い感情が漏れ出しているというか……。
ニタニタと笑っているような、嫌な雰囲気のある魔物だ。
「イビルウルフと呼んでいる。気を付けろ、思っている以上にいやらしい戦い方をしてくると思え」
ギルドマスターがそう説明してくれた。
ほぼ同時に、奴らは一斉に咆哮を上げて、門を破るために動き出した。
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