37 大蛇特攻
さて、ティータの案内で魔境を抜け、街道に戻る。
そんな俺の後ろには……。
ズッズッ。
ズッズッ。
「ううん、流石にちょっと運びづらい」
ちょっとで済むところがとんでもない。
運んでいるのはあの迷彩大蛇だ。
あの巨体にオークの時と同じように蔓を集めて縄にして、全員で必死にまきつけてセイナに運んでもらっている。
流石にこれはデカすぎるだろうと思ったが、運べてしまった。
魔境ではあちこちに引っかかっていたが、街道にまで出ると邪魔するものがなくなったのか、進むのが速くなった。
俺が必死に【衝撃邪眼】を撃たなくとも倒せたかもしれない。
とはいえ、普段のセイナは暴力事を望んでするタイプじゃないので、戦わないだろうが。
それでいいと思う。
俺でなんとかできる分は、俺がやればいいんだ。
さすがにこれは運べないけどな。
「うっ、ひえ」
フォンレストの街が見えてくると、すでに門の前ではちょっとした騒ぎになっていた。
門番だけじゃなくて、他にも兵士がいる。
明らかに、俺たちに注目しているな。
「と、止まれぇぇ!」
少し上擦った声で怒鳴られ、槍を向けられた。
「お、お前たちは何者だ!」
「え? 冒険者です」
「ああ、ちょっと待ってください!」
慌てて前に出たミラが冒険者の証を見せながら彼らのところに向かった。
それから冒険者ギルドの職員がやって来て、大蛇の鑑定なんかをこの場でした。
この大蛇はアサシンヴァイパーの異常成長体なのだそうだ。
特殊な鱗で姿を消し、毒で抵抗できなくさせてから飲み込む。
こんなに大きくなったら毒なんて使う必要はなさそうだ。
アサシンヴァイパーの特殊な鱗は、その能力を再現した装備を作るのに使われるので大変高価で、毒も錬金術に使われる。
肉も芳醇な魔力によって美味しいとのこと。
俺たちの世界だと、大きくなりすぎると不味いみたいなイメージがあるけどな。魔力が味覚に影響を与えるのか。
そしてこの大きさがすごい。
こんなものが街にまでやって来ていたら大損害を受けていたことだろうとのこと。
きっと、領主に呼び出されることになるから、しばらくは街にいるようにと言われた。
それからは、パレードみたいになった。
門が開かれ、大蛇が進む。
運ぶのはもちろんセイナだ。
「うわぁ!」
「え? なにあれ?」
「すごーい」
道が開けられ、左右に見物人が集まっている。
子供達には概ね好評だが、大人たちは大蛇を運んでいるのがセイナ一人だと気付くとドン引きしている。
「うう……」
その視線に、セイナも気付いたようだ。
「ねぇ、タク君、変な目で見られてる気がするんだけど!」
「大丈夫。英雄扱いだって」
「ええ、それはそれで嬉しくないような」
「ほら、セイナにしかできないんだから、がんばれ」
「うう……」
納得いかない様子で、だけどここで駄々をこねても恥ずかしいし、というセイナの煩悶が手に取るようにわかるのだけど、大蛇を運んでもらわないといけないので、俺はセイナを応援した。
大蛇のおかげで、ティータが戻ってきたこととか、俺たちが騎士隊長になにをしたかとかは忘れられたみたいだしな!
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