36 ポポリ草
迷彩大蛇を倒し終わり、ミラたちのところに戻る。
ちょっとだけ迷った。
大蛇が通った跡を辿ればいいやと思っていたんだけど、同じところをぐるぐる走り回っていたせいで、跡がちょっとした迷路みたいになっていたせいで、簡単には戻れなかったのだ。
「ああ、いた!」
「おお、危ねぇ、よかった」
ミラたちを見つけた時はけっこう本気でホッとした。
「あ、セイナさん、大丈夫でしたか?」
「うん! タク君が大活躍したよ」
「おお、すごいですね」
「それで、ティータさんはなにを?」
ティータは難しい顔で地面に座り込んであの変なフラスコを睨んでいる。
「ポポリ草が無事だったから、抽出? をしてるそうですよ」
「そうなんだ。こっちは大丈夫だった?」
「大丈夫でしたよ。あの大蛇のせいでこの辺りの魔物はいなくなっていたみたいです」
「あんなに大きかったらご飯とか大変そう」
「ですよね。でも、魔境だとああいう大きいのがたくさんいるところもあるそうです」
「不思議」
「不思議ですよねぇ」
そんな呑気な会話ができるぐらいに、ここは無事だったらしい。
ティータは土下座に近い状態で地面に置いたフラスコを睨んでいる。
片方のフラスコの底に穴が空いていたようで、そこに地面に生えたままのポポリ草を入れている。
それから……あれは魔力を注いでいるのか?
フラスコ全体が淡く光り、もう片方もフラスコになにかが少しづつ流れ落ちていく。
あれでポポリ草の成分を抽出しているのか。
ポタポタと落ちていく液体をティータは真剣に見つめている。
その様子を見る限り、自分の仕事に真面目に向き合っているのだなと思える。
ミラやセイナは気にしていないようだけれど、俺はまだ気になっている。
「なぁ、領主の娘、エメルネアさんだったか? その人の病気ってなんなんだ?」
「わかりません」
フラスコから目を離さず、ティータは言い切った。
「わからないのかよ」
それなのに、どうしてその薬が効くって確信を持てるんだ?
熱が出たのが理由だって言ってたが、それを証拠だとするのは弱いんじゃないのか?
大丈夫か?
「わからないけど、エメルネア様にはもうそれしか希望がないんです! だから、私がやるしかないんです!」
「ええ……」
使命感はすごいけど、使命感だけって感じなんだが。
大丈夫なのか?
「んんん……」
悩んでいると、俺の中でなにかが動く感じがした。
【X%001】が変化した。
「おっ、これは……」
これとセイナがいれば、なんとかなるか?
なればいいんだけど。
うん、俺、ティータを信じていないな。
まぁ、流れで知り合って、そのまま依頼を受けているだけなんで信用とかがあるはずがないんだけどな。
セイナとミラはどう考えているのやら。
「で、できた!」
震える声でティータが声をあげ、フラスコを持ち上げた。
そこには青い液体がうっすらと溜まっている。
「それだけでいいのか?」
「十分です! さあ、街に戻りましょう」
嬉しそうなその姿は善人なんだけどな。
いやほんと、変なことにならないといいな。
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