35 迷彩大蛇
なにも見えない。
オークの集団をなにかが一攫いで持っていった。
だけど、一体一体がお相撲さんレベルの巨体を持つオークの集団が一気に消えたのだ。
そこになにかがいるのだとしたら、とても巨大ななにか、ということになる。
「いるとしたら、あそこだろ」
ぼたぼたと土が落ちていったので、それで予測を立てて【衝撃邪眼】を放つ。
その瞬間、命中した辺りがばっと弾けた。
爆発の煙が赤く染まる。
血だ。
その瞬間、現れた。
「蛇!」
セイナがか細く悲鳴を零す。
そこにいたのは巨大な蛇だ。
頭だけで平屋の家屋ぐらいはありそうで、その頭を支える胴体も尋常じゃなく太く長い。
俺の【衝撃邪眼】は頭と胴体の接続ポイント、首?に突き刺さったようで、鱗が剥げて肉が抉れ、血が溢れている。
オークの集団を飲み込む途中なのだろう。
傷がある場所よりも下の方がボコボコに膨らんでいた。
塊で飲み込んだせいで、つっかえているような感じか?
感情のよくわからない目が、俺たちを見ている気がした。
「怒ってる?」
「怒ってるでしょ」
「去ってくれないかな?」
「いま、タク君が叩いちゃったからね」
「そうかぁ。ううん、ミラ、戦える?」
「……やるなら、覚悟を決めます」
ミラも緊張した顔で、いつでも剣を抜けるように構えている。
「そっか、じゃあ」
「ここで戦わないでぇ!」
とティータが悲鳴を上げ、それをスイッチにして蛇が動いた。
「あの辺りに群生地があるはずなんです!」
「まず逃げる」
やる気を削がれたので、俺たちは一斉に背を向けて走り出した。
いや、走っているのはセイナで、俺は抱えられているだけだけどな。
「ちょっと、セイナ」
「あっ、タク君!」
抱えられていた俺は、セイナをよじ登って右肩に移動した。
大蛇は体の一部を周囲に溶かしながら追いかけてくる。
透明になっているんじゃない。
あの蛇の表面が、周りの景色に合わせて色を変えているのだとわかった。
カメレオンと同じか?
とりあえず、迷彩大蛇と名付けておこう。
セイナの肩に登った俺はそこから【衝撃邪眼】を撃つ。
鼻っ柱を撃たれて迷彩大蛇は仰け反り、目を充血させて追いかけてくる。
怒ったかな?
「よし、このまま逃げながら撃ちまくるぞ!」
「うん!」
俺に言われ、セイナは元気に返事をして走る。
「あっ、ちょっ! 待ってぇ」
ミラとティータを置いてけぼりにした。
迷彩大蛇の敵意が二人に向いたらまずい。
俺は【衝撃邪眼】を連射して、こっちに来いと煽る。
おっ、うまく引っかかってくれた。
「待ってぇ!」
「ミラはティータの手伝い!」
俺はそれだけを言って、迷彩大蛇の注意を引くためにさらに撃ちまくった。
迷彩大蛇は鱗を破られるとその部分が景色に紛れることができなくなる。
そのせいで、こちらが撃てば撃つほど、大蛇は隠れられなくなってしまっている。
迷彩大蛇の方も痛覚がないのか、一度頭に血が上ると追いかけるのを止められないのか、ひたすらに追いかけてくるので頭を狙いやすい。
とにかく撃ちまくった結果、ついに大蛇は頭が潰れて死んでしまった。
「倒せたな」
「倒せちゃったね」
「やればできるもんだ」
「うん、タク君はすごいから」
「いや……」
ノンストップで魔境を走り続けられるセイナの体力と身体能力の方がすごいと思うんだけど。
……まぁいいか。
おかげでセイナの【成長補正】が+2、俺の謎スキルが【X%001】になった。
100%。
今度はなんのスキルに変化するのか。
すぐに変化する様子はないが、はてさて。
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