30 嫌われ薬師?
冒険者ギルドに到着した。
ただ、看板が前までの街と少し違った。
「冒険者と傭兵ギルド?」
そう書いてあったのだ。
「この街では兼ねられているんです」
とティータが説明してくれた。
説明してくれたんだけど……。
「うわ、また来たよ」
「ていうか、生きてたのかよ」
「しつこいな」
ギルドにいる荒くれ者っぽい連中が、まるで教室にいじめられっ子が入ってきた傍観者的立場のいじめっ子みたいなノリで陰口を囁いている。
「どういう状況?」
「空気が良くないね」
そして、その後に入ってきたセイナを見て、全員がざわめく。
流石にオークを三体引きずるようなのは、珍しい光景のようだ。
「買取お願いしたいんですけど?」
「は、はい。こちらです」
受付にいた男性もティータを見て顔を顰め、その後に俺たちを見て慌てた。
そのまま魔物肉の買取所に案内されて、そこで値段がつけられる。
皮も地面に擦れている部分は痛んでいたけれど、それでもそれなりな値段で買ってもらえた。
特に肉がいい値段になった。
「やりましたね! オーク肉は美味しくて人気なんですよ」
「そ、そうなんだ」
「あっ、まだ食べたことないですか? 美味しいところがあるんで紹介しますよ」
そんなことを言いながら、俺たちへの使命依頼を受付に通してくるのだから、意外にしっかりしている。
微妙な視線に晒されたまま、俺たちはギルドを出た。
「ここ、ここの屋台が美味しいんです!」
ギルドを出てから連れて行かれたのは、食べ物の屋台が並ぶ一角だった。
中央にたくさんのテーブルやイスがあり、そこを囲むように屋台がずらりと並んでいる。
青空フードコートみたいな感じだ。
そこの一つの前にティータは連れてきた。
「ここのオークミートサンドが最高なんです」
「褒めてくれるのは嬉しいけどよう。ティータちゃん」
だが、屋台のおっちゃんは渋い顔だ。
「できれば明るいうちは来ないでくれよ」
「今日は新しいお客さんを連れてきましたから」
「そうなんだけどよう」
屋台のおっちゃんは周囲を気にしながらも、コッペパンみたいなパンに薄切りした肉と野菜が混ざった具を挟んで、俺たちに渡してくれた。
別の屋台で飲み物も買い、テーブルを一つ占拠してから初めての魔物食チャレンジ。
俺は嘴なんで食べにくい。
セイナが躊躇しているので俺がさっさと食べる。
羽みたいな両手でパンを挟み、中の具を啄む。
「あっ、美味い」
「え?」
「生姜焼き的な? でもちょい焼肉のタレ的な感じもあるな。美味い」
「そ、そう? じゃあ」
セイナも覚悟を決めて一齧り。
すぐに美味しい表情になった。
「あ、美味しいですね」
「でしょう!」
ミラも同意し、ティータは鼻高々だ。
これで魔物食への嫌悪感が薄れたのか。セイナとミラは次を求めて屋台へと向かった。
俺はまだ食べているので、ティータと留守番。
「それで……」
「はい?」
ニコニコと屋台に向かったセイナたちを見ているティータに、問いかける。
「なんで嫌われてるわけ?」
「うっ……か、関係ないと思います」
「一緒に行動してるんだから、関係ないは無理がないか?」
「で、でも……」
「あんたはいい人そうだが、いい人だから人に嫌われることをしないってわけでもないんだろうな」
「ピーピー」
「で、なにをやらかしたんだよ?」
「ピーピー!」
「ていうかそれ、口笛のつもりか?」
鳴らしてないだろ?
言ってるだけどろ?
「おい、女」
と、俺が問い詰めていると背後から声をかけられた。
振り返ると、鎧姿の男がティータを睨んでいた。
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