26 ゾンビ経緯と
なんでこんなことになったのかを、冒険者ギルドで説明してもらった。
アスビルは古戦場が近くにある影響から、死霊魔法を使う者にとって有利な場が形成されている。
そのせいで、死霊魔法の研究する者が集まりやすい。
研究は禁止されているのだけれど、たびたび、それを無視して行う者がいる。
今回は、隠れて死霊魔法の実験をしていた者がゾンビの大量発生の影響を受けて失敗し、幽霊を大量召喚させてしまった。
ということだった。
騎士団や冒険者ギルドは治療院でのことは把握していない。
向こうが把握する前に俺たちが倒してしまったからだ。
一応、ギルドに強い幽霊がいたということだけ報告すると、治療院の裏庭には、以前に疫病などで大量に亡くなった方の遺骨が埋められていたりするから、それが原因ではないか、ということになった。
ここからは推測になるが、昔、死霊魔法の研究をしていた者が死亡し、裏庭に埋められた。
だが、自身の魂に死霊魔法でなんらかの処置を施していたのか、魂は成仏とかせずにあの土地に定着。ミーシャを利用して復活しようとしていたところで、今回の騒動が発生し、骨幽霊として復活できた……というところか?
色々と重なった結果だろうな。
ミーシャは悪くない。
うん。
そういうわけで、ミーシャのことは黙っておくことにした。
実験していた魔法使いも騎士団で捕まえたということだし、これで解決ということで。
「それで、ですね……」
ゾンビ退治の件の報酬に加えて、幽霊退治に貢献したことでの報酬も積み上げられた後で、説明をしていた係の人が言いにくそうな顔で、それでも言った。
「神殿の方たちが、あなたを探しています」
と、セイナを見た。
「え? 私?」
「はい」
「どうして?」
こてんとセイナが首を傾げる。
俺にもわからない。
「幽霊を倒された光景が……その……とても神聖だったそうで、あなたを聖女に認定したいと」
「ええ⁉」
「どうでしょう?」
「嫌です!」
「ううん……そうですかぁ」
「それに、倒していたのはタク君ですから!」
と、抱えていた俺を前に出してくる。
いや、やめろよ。
俺だって目立ちたくないぞ。
「そちらは従魔? なんですよね? でしたらそれを従えるあなたがやはり聖女、ということにしかならないと。あるいは聖なる存在ということで、神殿が引き取るとか言いかねない……」
「すぐに出ていきます!」
セイナの決断は早かった。
「タク君を奪うなんて、絶対に許さない!」
「いや、そういうこともあり得るだけで、そうなると決まったわけでは……」
「行きます!」
「ああっと、その報酬袋を忘れるなよ」
「あ、うん」
俺に言われたセイナは報酬の入った袋をさっと取ると、ダッシュで冒険者ギルドを出た。
「待ってくださいよう!」
「ミラも来るのか?」
「はい。あなたたちといると、騒動に困らなそうですから!」
「ううん……」
騒動があった方がチートスキルを手に入れられるかもしれないが、あんまり嬉しくないなぁ。
ああ、そうだ。
例の【X%】のスキルだけれど……また生えた。
どうやら俺の行動に対応して、なんらかのスキルへと変化するという謎スキルのようだ。
なんでこんなものが現れたのかがわからない。
親父たちが俺に内緒で仕込んだのか?
こんなチートスキルを仕込むような余裕なんて、うちのダンジョンにはなかったと思うんだけどなぁ?
いや、でも……そうか。
俺に生えて来たスキルをダンジョンマスターの権能で還元してポイントを稼ぐっていう方法もあるな。
セイナの【成長補正】のスキルだって、育てて強スキルにまでなってから還元してもポイントになる。
チートスキルよりは安く買いたたかれるだろうが。質より量作戦だな。
うん、こういう返済方法もあるな。
ただまぁこれは、本当に要らないなってなるまではやらない方がいい。
返した後で後悔したくない。
「それで、この後どうするんですか?」
街を出たところで、ミラが聞いてきた。
「そうだね。どうしようタク君?」
セイナは当たり前のように俺に聞く。
やれやれ。
「まぁ……道なりに行くしかないんじゃないか?」
「考えはないんですね」
ミラに呆れられたが、最終目標以外はなにも決まっていないもんなぁ。
流れに身を任せるしかない。
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