25 勝利と



 セイナになにが起きたかというと、【成長補正】の+分を利用して、スキルを獲得した、ということだ。


 なんのスキルを獲得したのかというと【退魔特効】。


 その名の通り、魔に強くなるというスキルだ。


 ……手に入れられたっけ?


 あ、+2が全部消えてるな。


 全部使用で上位のスキルを獲得したのか?


 え? そんなことってできるのか?




 ……なんか、裏技的なことが起こったのか?




 セ、セイナの怒りがスキルの常識を覆した?


 怖い。




「…………」


「痛いっ! 痛いっ!」




 そして、戦いはすでにセイナの一方的な戦いとなっていた。


 最初の一発が顎に突き刺さって、足に来た骨幽霊はそのままダウン。


 後はマウントからの叩き下ろしを無言で行うという、見ているこっちまで胸が痛くなるような状況が続いている。


 同時に放った俺の【衝撃邪眼】も、ボディに刺さっていたからちょっとは有効打になっていると思う。


 自分の功績も主張したいんだが……なんかかわいそうにも思えてくる、引っ込めたい。


 だけど、生かしておくわけにもいかない。




「滅びろ!」


「ぐはぁぁぁ!」




 最後の一撃が骨幽霊を砕き、消滅した。




「倒したよ、タク君」


「お、おう」




 血……は付いていないけど、自分に倍する巨体のモンスターをマウントから撲殺消滅させた後のニッコリ笑顔は……コワい!




「まだ、終わってないですよ!」




 と、悲鳴を上げたのはミラだ。


 そう。


 空にはまだ幽霊がいる。


 まだいるってことは……こいつら、骨幽霊とは関係ないのか?




 そう、考えていたら。




「え?」


「ん?」


「なんですか、それ?」


「んん?」




 セイナとミラの声で、自分の変化に気付いた。


 なんか、光ってるな。


 どういうことだと思っていると、なんとなく、わかった。




 スキルだ。


【X%25】となっていたスキルが【X%001】となっていた。


 右から読みが正解だったのか?


 けっこうどうでもいい謎解きではあるが、百パーセントになって、どうなるんだ?


 そう思っていると、【X%001】がさらに変化する。




 これは……。


 なるほど、これなら。




 俺は空に向かって【衝撃邪眼】を放った。


 ただのエフェクトだった光が拡散し、周囲の幽霊たちを薙ぎ払っていく。




「なんです? なにが起こったんですか?」




 ミラが混乱している。


 その気持ちはわかる。




「ああ、なんか、聖獣、とやらになったらしい」




【X%001】は【聖獣化】というスキルに変化した。


 それが原因のようだ。


 どういうスキルなのかはまだ把握しきれていないが、聖属性に強くなるのは確かなようだ。




「ほんとだ、頭に光の輪があるよ」


「なに、そんなもんがあるのか?」




 セイナの指摘で頭に手を伸ばしてみようとしたが、届かない。


 まぁ、オンオフはこっちで決めれるみたいだから、とりあえず、オフだ。


 なんか周りが眩しいし。




「あっ、でも幽霊はまだいなくなってませんよ!」


「え? これ全部、俺がなんとかするのか?」


「私だと、届かないよ?」


「ボクもです」




 幽霊は空にいるし、セイナの戦闘は格闘で、ミラも剣。


 やれるの俺だけか。




「仕方ない」




 再び【聖獣化】をオンにし、幽霊退治に勤しむことになった。








 セイナに抱えられて俺たちは街中を移動し、【衝撃邪眼】を放ちまくった。


 ときどき、幽霊が反撃してくるので、それはミラが撃退する。


 いまさらだが、彼女の剣術は幽霊にも効くようだ。すごいな。




 それが目立ったのだろう。


 幽霊騒ぎが終わったところで、なんか俺たちを見る目が変わっていた。






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