24 骨幽霊戦



 話の流れから察するに……。


 治療院にミーシャの母親が入院している。


 長く退院できていない。


 母に元気になって欲しいミーシャを、裏庭で眠っている骨幽霊が利用した。


 ミーシャには、なにかアンデッドに力を与えるスキルが存在する?


 とにかく、ミーシャは利用され、虫やら虫やら小魚やらの供物も積み重なった結果、骨幽霊は復活した。




 空で飛びまわっている幽霊との関係は?


 ゾンビの大量発生は関係あるのか?




 わからないのはこの辺りか。


 後は、【衝撃邪眼】が幽霊系の魔物に通用するのかだが。




 ドバアン!




「ぐへっ!」




 グバアン!




「ぐはぁ!」




 ゴバアン!




「ぐほうっ!」




 通用している。


 まぁ、知っているけどね。


 ホッパーコカトリスの能力設定をしたのはうちなんだから。




 洞宮家が運営するルータン・ダンジョン。


 ホッパーコカトリスは中層の壁として君臨する魔物だ。


 本来のホッパーコカトリスが使う【衝撃邪眼】は全属性に通用しつつも、中層を攻略できる上級冒険者なら耐えながら接近して倒すことができるぐらいの難易度に設定してある。




 まぁ、幽霊系への有効は、挑戦者側に幽霊なんてほぼいないからどっちでもよかったんだけどな。




 ともあれ、俺は骨幽霊を攻撃できる。




「貴様ぁ! ずるいとは思わないのか!」


「思わん!」




 接近を諦めて空中で逃げ回る骨幽霊に、俺は断固として言い放った。




「手も足も出ないまま滅べ!」


「ぐぬぬぬぬ! おのおおおおおおれぇぇぇぇぇぇぇい!」


「むっ」




 骨幽霊の雄叫びが変化を呼んだ。


 周囲の空気の色が灰色じみた淀んだ色になり、それに触れた幽霊が骨幽霊の中に吸い込まれていく。


 そして、その淀んだ色は引力のようなものがあるのか、周囲に続々と幽霊が集ってくる。


 ミラの剣が幽霊を切っていたのだけれど、そんなものでは追い付かない数だ。




「ふはあぁぁぁぁぁぁ……これでどうだ!」




 骨幽霊はパワーアップした。


 白に近い灰色の全身スーツを着た、ゴリゴリのマッチョマンみたいな姿になった。


 顔のデザインは骨のままだが、先端が鋭くて長い舌が飛び出している。


 幽霊を吸収しまくった結果でどうしてそうなるのかわからないが、重量感のある着地をした。


 もしかして、飛べなくなってないか?




「これでお前の、鬱陶しい光線ももう無駄だ」


「それはどうかな?」




 ドドドと突撃してくる骨幽霊に【衝撃邪眼】を浴びせる。


 ちっ、吹っ飛ばなくなったか。




「ふははははは! 死ねえい!」


「なんのっ!」




 でかい拳が俺に向かって振り下ろされたので、退避。


 引き撃ちで対応する。


 拳は地面を派手に抉るし、突撃をかわせば治療院の敷地を示す壁を粉砕した。


 一気にパワータイプに変更したな。


 とはいえ、力を持て余しているのか、動きが単調だ。


 いきなり動きが変わる殴りと突撃に気を付けながらの引き撃ちで対応……グホッ!




「ふはははは!」




 できなかった。


 当てられた。


 くそ。


 さすがに、ゲームみたいに一定の行動しかできないってことはないか。


 こっちの回避の動きを読まれてラリアットされた。


 吹っ飛ばされて転がったところを掴まれる。




「さあ、このまま握り潰してくれ……痛っ!」




 させるか。


 俺の攻撃スキルは、まだ【毒嘴】がある。


 さすがに毒は幽霊には効かないはずだが、俺を持てるぐらいに物質化した状態だとどうだ?




「あいたっ! いたたたた!」




 効いた。


 継続ダメージのあるタイプの毒だ。


 おらっ、もっと食らえ!




「いたたたたっ! おのれぇ!」


「ぐほっ!」




 壁に投げつけられた。


 破片が上から落ちてくる。


 穴でも開けたか?




「タク君!」


「んあ?」




 声に振り返ると、そこにはセイナがいた。


 あれ?


 怒ってる?




「お、おう。ミーシャはどうした?」


「ママなら治したよ」


「おう、そうか」




 ミーシャの母親が病気なら、外傷を担当していたセイナはいままで会っていなかったはずだ。


 それを治したということは、【回復魔法補正】と魔力ごり押しによる【治療】が効いたということか。


 それともなにか、別のスキルを獲得したか?




【成長補正】に+2があったから、スキルを二つ獲得できる状態だったし。




 だけど、セイナの顔はミーシャの母親を治したことはどうでもいいと物語っていた。




「よくも、タク君を……」


「おおい、セイナ?」


「許さない!」




 その瞬間、セイナの拳に光が宿った。


 なんか、清らかな感じの光だ。


 顔はめっちゃ怒っているけどな。


 そして、骨幽霊に向かって突っ込んでいく。




 あ、これやばい。


 俺の活躍の場がなくなる。


 ぼうっとしている場合ではないと、俺も飛び出して【衝撃邪眼】を放った。










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