23 復活の骨幽霊



 幽霊がビュンビュン飛び回る空の下、一桁代の女の子が邪悪な笑みで笑っている。


 ううむ、なんでこんなことになったんだろう?


 小魚だぞ?


 あの子が昨日、あの石積みの前に備えていた供物は、小魚だけだ。




 それで、こんなことが起きるものか?




 だけど、【ガイド】は目の前の問題を解決するために、この場所に導いた。




「ミーシャちゃん! なんで⁉」




 セイナが叫ぶ。


 さすがにこれは、あいつも驚いたようだ。




「お姉ちゃん、神様がね、いたんだよ!」




 ミーシャはそう言って笑う。


 いや、わけがわからん。


 ただ、俺の視線は崩れた石積みに向かい、そこでまた【ガイド】がチリッとした。




 なるほど……。


 いや、それしか考えられないといえばそうなんだが。


 原因はあれか。




 ミーシャが神様だと思っていたあの石積みが、この騒動の原因か。




「なら、その神様が、この上のことをやらかしているのか?」


「上?」




 ミーシャは首を傾げ、それから上を見て、びっくりした。




「うわっ! なにこれ⁉」


「こっちが聞きたいんだが?」


「ええ! 知らないよう!」




 目を真っ黒にさせたまま、慌てふためくミーシャの姿は……わけがわからん。




「くくく……はははははははははは!」




 驚くミーシャに戸惑っていると、いきなりその笑い声が響いた。


 ミーシャではないし、俺たちでもない。


 第三者が現れたのかと思ったが、周りを見回しても人の姿はない。




 では?




「ようやく、この時が来た!」




 声を発しているのは、崩れた石積みからだ。




「虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫……たまに小魚!」




 恨み事か?




「そんな供物でも積み上げられればこの力ぁぁぁぁぁぁぁ! ああ、素晴らしいぞ娘。よくできました!」


「え、えへ」




 褒められたと思ったのか、ミーシャが照れている。


 いや、褒められてるのか。




「ようやく……我、復活!」




 その姿が土の下から現れる。


 ぼろ布を纏った人骨だ。


 死霊系の上位モンスターか。




 ……に、しても造形が普通だな。


 もうちょっとなんとかならんかったのか?


 ここで出るんだからボス格だろうに。


 これだとインパクトに欠けるよな。




「タク君?」


「……うん?」


「声に出てるよ」


「おっと……すまん」




 これでも一応はダンジョンマスターをしていたからな。


 モンスターのデザインも色々と考えていた。


 その癖が思わず出てしまった。




「モンスターじゃなくて、魔物な。悪い悪い」


「そういうことじゃない!」




 怒ったのは骨……なんだろうなこれ?


 とりあえず骨幽霊でいいか。


 怒ったのは骨幽霊だった。




「ようやく復活したところで格好のことでツッコまれた我のこの想い! どうしてくれる!」


「ごめん?」


「誠意がない!」


「そりゃあなぁ」




 一応、敵? だし。


 しかしこいつ、骨の癖に感情豊かだな。


 あの顔、ただの骨じゃないな。


 いや、骨の姿をした幽霊ってことか。


 ならもっとデザインに拘れよ。




「ぬうううううう、この想い! 貴様らを打倒することで晴らしてくれる!」


「待って!」




 一人で興奮する骨幽霊に、ミーシャが割って入る。




「神様! ミーシャのお願い。忘れないで!」


「ん? ああ……」




 お願い?


 もしかして、お願いがあったから、あそこに石積みを作って供物をささげていたのか。




「たしか、そなたの母をこの建物から出られるようにするというものだったか」


「そうだよ!」


「ふむ、心配するな娘よ」


「ならっ!」


「ああ……」




 骨幽霊がニヤリと笑った。




「この建物を破壊して、そなたの母を連れ出してやろう」


「そうじゃない!」


「違うのか? ならば、そなたも母も我の下僕としてやろう。それならば、二人仲良くいつまでも一緒だ!」


「違う違う違う! ママを元気にしてって!」


「ふはははははははハブア!」




 骨幽霊の哄笑が止まったのは、俺の【衝撃邪眼】が命中したからだ。




「子供相手にそんなことするなよ。器が知れるぞ」


「……飛べない鳥が調子に乗るな」


「雑なデザインのおかげで浮けてる奴に言われてもな」


「貴様ぁ!」


「沸点低いのも受けてる理由だなぁ!」




 骨幽霊が俺に向かって来たので【衝撃邪眼】で迎え撃つ。


 同時に、空の幽霊どももこちらに向かって来た。




「上は任せた!」


「任されました!」




 ミラが応える。




「ミーシャを頼む」


「うん!」




 セイナが俺を置いて、ミーシャの確保に動く。




 俺と骨幽霊の戦いが始まった。






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