21 ゾンビ退治



 土でできているせいか、腐敗臭的な臭いはなかった。


 ただ、使われた土がよくないのか、ヘドロに似た臭いはしてくる。




「おおえす!」


「おおえす!」




 盾を並べた騎士や巨漢の冒険者がゾンビの群れを受け止める。




「ほら、次いいぞ!」




 ときどき、鎧の隙間を空けて、そこからゾンビの群れを少し奥に入れる。


 そこには武器を持った者たちが待ち構え、ゾンビたちを各個撃破していく。




 さらに後ろでは、その場で作られた見張り台の上からは攻撃魔法や弓矢による攻撃が群れに行われている。


 俺もそこに参加して【衝撃邪眼】を撃ちまくっている。




「怪我した方はこちらに来てくださーい」




 見張り台の下では、負傷者が運ばれてきて回復魔法による治療受けている。


 セイナもここで働いている。




 誰かが数えたが、ゾンビの数は千ほどだそうだ。


 ちなみに、俺たちの側は大体百五十人ぐらいだ。


 その内、戦っているのは百人ぐらいか。


 一人十体ゾンビを倒せば終わる計算だな。


 ちなみに、俺はとっくに十体以上のゾンビを倒した。


 いまは壁役の連中の分をこなしている最中だ。


 ミラは倒す役のところにいる。


 最初は力み過ぎたことに気付いて恥ずかしがっていたが、いまはそんな暇もない。


 ゾンビ退治は対処方法が確立されていて、そこまで危険ではなさそうだけれど、重労働であることは確かだ。


 ゾンビは頭を潰すと元の土に戻るから、その場で戦い続けているとそのまま土の山ができてしまう。


 どうするのかと思えば、その土をスコップや木の板、布なんかに載せて戦闘域外に運ぶ役がいるのだ。


 しかもそれが、動員数の三分の一もいる。


 五十人だ。




 慣れているのだろう連中は、大きめの担架みたいなのを用意して、その上でゾンビを転がしてから首を落として倒す、というのを繰り返している。


 すげぇと思ったけど、ああいうのは行政側が用意してしかるべきだよな。




 もうなんか……なんだろう。


 戦闘シーンというよりは、土木工事をしているような気分になるのだから、不思議だ。


 怪我人が出ているというのが、少しは緊迫感を継続させている。




 後、一緒に戦ってる魔法使いが俺を見て驚いている。




「ええ、魔法より長持ちしてるんですけど?」


「これ、従魔なの?」


「魔物使いなんて本当にいるんだ」


「ルータン・ダンジョンのホッパーコカトリスだっけ?」


「怖すぎ。あそこのダンジョンには近寄らんとこ」




 え? やめて。




 ダンジョンは攻略者が通ってくれないと困るのよ。


 宝物とかはいくらでもとってもいいからさ。


 ううん、親父……すまん。




 そんな、予想外のところでダメージを受けたりしたが、ゾンビ退治はその日のうちに終了した。




「疲れたねぇ」


「ああ」


「はいぃぃ……」




 セイナとミラがふらふらと歩く。


 ちなみに俺は抱えられている。


 抱えるだけの余力があるのだから、体力的にはまだ余裕なのだろう。




 このついでに、ここ最近の成長を記しておこう。




 セイナは治療院通いとゾンビ退治で大量の怪我人に魔法を使ったことから、【回復魔法補正】が一気に+5まで上がった。


【成長補正】にも+2がついているし、【魔物使い】も+3になった。




 そして俺は……特に変化なし……と言いたいが、一つ。




【X%1】が【X%25】に変化していた。




 %の後ろの数値がなんらかのカウントをしているのは確かなようだが、はたしてそれがなんなのかは、まったくわからない。


 わからないが、数字が%にかかっているのだとしたら?


『%25』が『25%』あるいは、右から読みで『52%』という意味だったとしたら?




 100になったときに、なにかが完成するということなのだろう。


 だけど、なにが完成するのやら。




【ガイド】がなにかチリチリしている。


 この時になって、ミーシャのことを思い出した。




 そして、思い出したことはフラグだった。




 帰って来たアスビルでは、騒動が起きていた。








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