第27話 送られて来た水晶(27日目・鉱物)


差出人不明の郵便物が届いた。

慎重に開けると、一つの水晶だった。先が尖っている形。見ると、中に透明な液体が入っているようで泡が浮いた。綺麗だ。僕はしばらく、その水晶に見入っていた。


「そんな郵便物開けるな」

次の日の図書館帰り、公園のベンチで、満寛に水晶を見せた。ひとしきり見た後、美しさは認めていたが、呆れたような顔で僕を見る。

「うん。それはちょっと反省してる」

「ちょっとかよ」

「でも、綺麗で、」

言いながら、また水晶に目をやると、中から透明な光が飛び出して、僕を刺した。

「え、」

視界が真っ白になる。しばらくして目を開けると、一面銀色の空間にいた。見上げると、高い天井は透明。足元はくるぶしくらいまで、澄んだ水が広がっている。いくつもの水晶が生えていた。あの水晶の中。直感だけど、そう思った。やっぱり、ただの水晶じゃなかったみたいだ。うかつだったなあとは思うけど、中も綺麗で、僕は少し歩いてみた。動くと聞こえる水の音と冷たさが、心地良かった。平らで切り株みたいな水晶を見つけて、腰掛ける。気分がとても良い。ずっとここにいても良いかも。そう思った。そういえば、何でここにいるんだったか。僕は、何をしていたんだっけ。うかつ、って何が。不安な気持ちになったけど、それも一瞬で、水晶と水の煌めきを見ていると、どうでも良くなって来る。

眠くなって来て、水があるのも構わず、仰向けになった。ふわりと、身体が水に浮く。軽くなって、ますます心地良い。目を閉じた。良く眠れそう。

「宗也!」

僕の名前?頭に響くような叫び声に、目を開けた。


目を開けたら、僕を見下ろす燃えるような瞳と目が合った。

「……みちひろ?」

急にいろんなことを思い出して、混乱した。

満寛は、僕を引っ張り起こす。公園のベンチだった。

「僕、どうしたの」

「知らん。急に消えた。この水晶からお前を貰うって声が聞こえたから、割った」

足元で、あの水晶が粉々になっている。触れようとして、全てが崩れるように消えた。僕は、満寛に目を戻す。

「ありがとう」

「宗也がうかつだと思ったけど、違うのかもな」

「え?」

「終わったから良い。帰ろうぜ」

僕はその帰りに、満寛にサイダーをご馳走した。満寛は複雑そうな顔で、僕とサイダーを見比べてから受け取った。もう大丈夫だってば。



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