第26話 答え合わせ(26日目・深夜二時)
ざぶん、と水音がした。
(前にも見た……
以前、高校の中庭にある噴水へ落とされた時に見た人影と、同じ。顔は分からない。
どこまでも沈んで行くのを感じ、宗也は目を閉じた。
朝。宗也は目を覚ました。見た夢を思い出し、一瞬考える。だが、直ぐいつも通りに支度をして、学校へ向かう。聞こえてくる蝉の声も、通学路の子どもたちの声もいつも通り。ふと見上げた空は、作り物のように青い。
(何か変だな)
一瞬違和感を覚えたが、そのまま学校へ向かった。授業も何もかもが、いつも通り。でも、宗也の中で違和感が大きくなる。何かが違う。
昼休み。机の中に手を入れた宗也は、何か紙に触れてそれを引き出す。
「手紙?」
中を開くと、それは宗也宛に書かれたものだった。
「プールに来られたし」
知らない字だ。宗也は首を傾げる。
(いたずら?)
「あれ、でもいつそんな話したかな……」
朝、満寛本人からも担任からも、休みの話は出ていなかった。
「それに、今って夏休みなんじゃ、」
宗也が気付いた瞬間、景色が揺らぎ、学校のプールサイドになった。プールの際に立っている。強い日差しは、しかし痛くない。
(ここ、何処なんだろう)
学校であって学校で無い場所。宗也は辺りを見回し、呟く。
「……夢?」
瞬間、宗也は背後からプールへ突き落とされた。
(またやられた)
宗也は水面を見上げる。無数の白い泡の隙間から見えるのは、あの時と同じ黒い人影。宗也の足は底に着かず、浮かび上がることが出来ない。
(誰なんだ……?)
青くなって行く視界の中で、今度ははっきりとその声が聞こえた。
『“ツカゾノユウラ”ニ、キヲツケロ』
「ツカゾノユウラに気を付けろ?」
宗也は自分の声で目覚めた。跳ね起きて、時計を見る。深夜二時。息が苦しく、何回か咳き込んだ。スマホで日付を見て、今が現実の時間だと確認する。
(ややこしい夢だった……でも、最後に聞こえた声は、前に夢で聞いたのと同じ声だったな)
黒い花を通して、宗也が何者かから害を受けていた時。夢を通して、同じ声が宗也に忠告していた。あの時は言葉が聞き取れなかったが、今夜、分かったのだ。
「でも、ツカゾノユウラって誰だろう……?」
宗也はもう一度、仰向けで横になる。学年のクラス名簿で確認してみようか、とつらつら考える内、再び眠りに落ちていく。
今度は何の夢も見ず、朝を迎えられた。
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