第4話

「助かった…!」


反射的に顔を上げた、

父の目に飛び込んできたのは、

雪の白よりもさらに白い、

白無垢をまとった老婆の姿だった。

腰の曲がったその老婆は、

なぜか、真冬の山中で異様な衣装を身にまとっている。

その異様さに、

父はただ呆然と立ち尽くすことしか

できなかった。


次の瞬間、老婆は玄関先で

激しく嘔吐し始めた。

体を震わせ、

白無垢が汚れるのも構わずに、

吐瀉物を撒き散らすさまは、

狂気とさえ言えた。

そして、すべてを吐き出すと、

老婆は満足したかのように

再び吹雪の中に消えてしまったのだ。

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