Day.12 チョコミント
チョコミントの発祥はイギリスなんだぜ、と自慢げに豆知識を披露してきた元カレが忘れられない。彼とは転職を機に生活リズムの違いで円満に別れ、これといって未練も無いのだけど、五年近く一緒に居たものだからその間に教えられたうんちくだけたまに思い出す。
特にチョコミントのそれは、蒸し暑い夏の朝に脳裏をよぎっていく。彼は起きてすぐガッツリご飯を食べ、満腹になったところでキンキンに冷えたアイスをかじるのが好きという、朝はスムージーだけで済ませる私には信じられない習慣を持っていた。初めてそれを知った時、互いが互いに驚いたのを覚えている。
どちらが提案したのだったか、朝食のメニューを交換してみる流れになった。私はその日の気分で好きな野菜や果物をスムージーにしていたが、彼はチーズドリアにレタスとコーンのサラダを添え、唐揚げを三個とコップ二杯分の牛乳、食後のアイスという、どう考えても朝向けではないラインナップを好んだ。基本的にメニューは毎日変わらない中、唯一変化するのがアイスだった。
完全に胃もたれを起こしてリタイア寸前の私に「今日のアイスはこれだぞ」とチョコミントのアイスバーが豆知識つきで差しだされる。当然食べる気力は無く、反対に物足りなさそうな目をしていた彼に食べてもらった。その時の彼の嬉しそうな顔といったら。それをかわいいと思ってしまったから、ずっと彼が心に居座っているのだろう。
風の噂で新たに恋人が出来たと聞いたが、今も変わらず例の朝食を続けて驚かれているに違いない。顔も名前も知らない彼の恋人に共感しながら、私はスムージーにミントを添えた。
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