Day.7 ラブレター

 けたたましく鳴る枕元のスマホを手探りで止めて、俺は寝ぼけ眼で天井をぼうっと眺める。ベッドから起き上がる気がしないのは、恋人とのデートが無くなってしまったからだ。昨日の夜、急な仕事が入ったと電話で告げられ、虚しさと寂しさを抱えて眠ったのである。

 俺と彼女は同業で、互いにブラックと呼ぶにふさわしいほど忙しい。予定を立てては反故にしたことも一度や二度ではない。

 二度寝しかけたところで、ふと疑問が首をもたげた。普段はスマホで目覚ましをセットしているが、今日は設定しなかったはずなのに。

 画面に表示された通知を見て一気に目が覚める。彼女から「テレビ見といてね」とメッセージが届いていた。頼まれた通りに朝の報道番組と向き合えば、最新の事件や事故を報じるコーナーになり、アナウンサーがニュースを読み上げていく。

 昨日午後、空き家で若い男女五人の遺体が発見されたそうだ。職場や学校が異なる彼らは、自殺志願者専用のネット掲示板で知り合ったらしい。

 アナウンサーが彼らの名前を読み上げる中で、あることに気づいて思わず笑った。五人の名前の頭文字をつなげると〝あいしてる〟になるのだ。

 どうやら彼女は仕事のついでに愛の言葉を伝えてくれたようだ。粋な計らいに感動してしまう。

 ニュース見た、俺もだよ、と彼女にメッセージを綴り、送信ボタンを押しかけて止めた。せっかくなら俺も同じ方法で彼女の想いに応えなくては。その決意が届いたのか知らないが、俺にも新たな依頼が届く。

 彼女への溢れる愛しさはそのまま活力となる。俺は得物を片手に意気揚々と仕事場へ向かった。

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