Day.8 雷雨
「推しユニットのライブがあるから一緒に行こう」と友人に誘われ、私はライブ会場とやらに初めて足を運んだ。本音を言うと興味はなかったけれど、熱の入ったプレゼンに根負けしたのである。
友人とともに会場へ向かえば、思っていた以上に人が多くて驚いた。根っからのファンはファッションやグッズでそれと分かり、そわそわと周囲を見回しているのは私のように誰かから誘われたり、初めて来た人たちかも知れない。
友人とは整理券の番号が離れているため、会場内に入ればいよいよ周りに知り合いがいなくなる。多少心細いが、スマホで時間を潰そうにもカバンから取り出すのも苦労しそうでやめた。声の入っていない、インストのBGMを聴きながら「これだけは買っておけ」と言われたペンライトの点灯チェックを意味もなくくり返すほかない。
曲が何度目かのループに入り、なんとなく雰囲気を掴み始めたところでBGMの音量が上がった。ハッとして間もなく照明が落ち、待ちわびたとばかりにファンたちがレモン色の明かりを灯す。
視界を真っ白に染める閃光が走った。反射的に目を閉じてしまい、黄色い歓声に慌てて瞼を開ければ、ステージ上に若い男性が二人立っていた。長身の黒髪と、彼より少し背の低い金髪――あれが友人からずっと聞かされていた〝
金髪がフロアに勝気な笑みを投げたのを合図に曲が始まる。ファンには嬉しいナンバーなのだろう、あちこちから嬉しそうな声と拍手が上がった。
腹に重く響く低音は雷に似て、ファンの手拍子は鳴りやまない雨そのものだ。面食らっていた私もいつしか自然と雨粒の一つに加わり、稲妻の化身のような二人に夢中でペンライトを振っていた。
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