第5話

彼は、よろめきながら立ち上がった。

足は震え、

心臓は肋骨を打ち破らんばかりに

激しく鼓動している。

呼吸は浅く、錆と恐怖の味がする。


「マヤ、お願いだ」


彼は必死に呼びかけた。

その声は、絶望に染まっている。


「僕だよ、デイビッドだ。

覚えてるだろう?」


かつてマヤだったものは、首を傾げた。

それは、彼女のいつもの仕草を、

歪めたような動きだった。

その虚ろな黒い瞳は、

彼を射抜くように見つめる。


「私たちは、選ばれたの」


それは、しわがれた声で言った。

マヤの声の、残骸だった。

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